なぜ、いま「羽田空港関連の鉄道建設」が盛り上がっているのか:杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)
羽田空港への鉄道整備計画が活発だ。JR東日本は貨物線を使う都心アクセス路線を計画。政府は都営浅草線の新線を構想し、東急蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶ路線計画もある。しかし、どれも東京オリンピックに間に合いそうにない。そこで杉山氏が提案するのは……。
羽田空港の需要増にどう対応するか
しかし、同じ資料集の中にある“首都圏の航空旅客需要”については、2030年以降も上向きになっている(参照リンク)。経済成長率が最も高い予測プランの場合、2030年には現在のほぼ2倍の航空旅客需要が出るという。これを主に羽田と成田で分け合うことになる。
航空旅客の“需要増”に対する供給の計画については、国土交通省が「首都圏空港機能強化技術検討小委員会の中間取りまとめ(参照リンク)」として2014年7月8日に発表済みで、羽田空港の航空機の発着回数を増やす計画となっている。
2020年の東京オリンピック時には、東京市街地上空の飛行経路設定と地上設備の拡充により、発着回数の空港処理能力が現在の44.7万回から3.9万回追加できるという(1年あたり)。こうなると騒音問題が懸念されるが、最近の旅客機は静かである。羽田空港に近い筆者宅の上空は、ときどき旅客機が通過する。おそらく、何らかの事情で着陸をやり直す飛行機だろうが、音はほとんど気にならない。
また、東京オリンピック終了後の長期的な方針としては、5本目の滑走路を設置する案(参照リンク)も検討している。滑走路増設による発着回数の増加は、年間で13万回を見込めるそうだ。
人口減によって地方の鉄道に対する投資は新線建設、被災路線の復旧ともに消極的になる半面、首都圏、とくに空港周辺の鉄道投資には前向きだ。JR東日本は東北方面の観光開発のニュースが多いが、それも首都圏の上野東京ライン、空港輸送の収益があればこそ成り立つ。
ちなみに、京急電鉄は長い間、三浦半島油壺への延伸を画策していたが、2005年に事業廃止を届け出て以降、現在は羽田空港輸送に注力している。東急電鉄は大田区の蒲蒲線構想に期待するなど、羽田空港が鉄道各社に与えるインパクトは大きい。
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