10年ぶりの値下げ 「原点回帰」で業績立て直す――ワタミ・清水社長:客離れ防げるか(1/2 ページ)
低迷が続くワタミが「和民」などの居酒屋チェーンで価格引き下げを断行。「取りこぼしたシェアを取り戻す」と清水新社長は力を込める。
外食チェーン大手のワタミは3月19日、商品戦略発表会を開催した。3月1日付けで新社長に就任した清水邦晃氏が初めて公の場に登場。業績不振に苦しむ同社の立て直しを図るべく、その第一歩として居酒屋チェーン「和民」「坐・和民」「わたみん家」の商品値下げを断行するなど改革のメスを入れる。清水氏は「原点回帰」を繰り返し強調した。
値上げを続けた結果……
ワタミの低迷は深刻だ。今年2月に発表した2015年3月期 第3四半期決算(関連リンク)によると、売上高は前年同期比で4.2%マイナスの1179億8000万円、営業利益は3億2500万円の赤字、純利益は56億4500万円の赤字となった。
特に主力の外食事業が大きく足を引っ張った。国内外食事業における売上高は467億8200万円(前年同期比11.7%減)、営業損失は27億500万円(前年同期は7600万円の損失)。9店舗を新規出店したものの、58店舗の撤退を余儀なくされた。
そうした中、和民などでは客離れの歯止めがきかない状況だ。この原因について、清水氏は「料理が遅い、量が多すぎる、価格が高いといった顧客の声が多いものの、対応できていなかった」と説明する。例えば、価格に関して、同社独自の調査では、割高と感じる大手居酒屋チェーンの1位が坐・和民、2位が和民という結果が出た。
皿単価を上げて付加価値を提供するという戦略の下、ワタミはこの10年間で値上げを続けてきた。2014年には一気に15%も平均価格をアップしている。それが大きな誤算だったというのが同社の見解である。「かつての和民は安くておいしい居酒屋が売りだった。その後、付加価値の高い個人経営のような店を目指したが、あくまで居酒屋チェーンに安さを求める顧客との間にギャップが生まれてしまった」と清水氏。
そこで今回、約10年ぶりに価格を全体的に引き下げる。わたみん家が3月19日から、和民が4月9日から。平均皿単価を現状の449円から401円に、客単価は2850円から2600円に下げる。例えば、和民の場合、生ビールは490円から450円、ハイボールは450円から290円となる。一連の値下げによる原価率の上昇は1%を見込む。
原点回帰を合言葉に、4000億〜5000億円と言われる居酒屋チェーン市場に改めて注力する。「(若者のアルコール離れなどの影響はあるものの)このマーケットは依然として大きい。取りこぼしてきたシェアを再び取り戻す」と清水氏は狙いを語る。
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