シニアの不安は「お金」だけなのか 与えられた「10万時間」という恐怖:お金もセンス(5/5 ページ)
超高齢化社会を迎える中で、「多くのシニアはお金を使わない」と言われている。「医療費などを考えると、貯蓄を崩すことはできない」といった声をよく耳にするが、問題は本当に「お金」だけなのか。
積極的に自分の資産を使う
さて、オレオレ詐欺の話に戻ろう。老後不安の中で、異常なほどお金を使わないシニアが、なぜこうも簡単に騙(だま)されてしまうのか。これほどまでに世の中で騒がれ、注意が促され、手口まで明らかになっているのにである。この心理については、本や雑誌、ネットなどで分析&発信されている。
例えば、(1)自分だけは騙されないという過信、(2)緊急時のパニック状態で冷静な判断が欠如、(3)特に高齢者に多い思い込みの激しさ、(4)世代的に性善説の人が多いため、(5)警官や弁護士などの権威に弱い、(6)少しでも早くリスクを回避したいという心理、などである。確かにこれらは当たっているだろう。しかし、私には、もう少し根源的なインサイトが潜んでいるような気がしてならない。それは「子どもや孫に対する愛」である。
先ほどから述べているように、根底にあるものは“生きがい”である子や孫を何とか守りたい、助けたいという強烈なエネルギーである。騙されているかもしれないけど、万が一本当だったら! という思いが彼(彼女)らをATMへ向かわせるのだ。だから、身内で被害に遭われたシニアをお持ちのご家族は、決して彼(彼女)に対し、「おじいちゃん、もう、何やってんの!」などと責めないで欲しい。
子どもや孫を思うが故の、愛すればこその行動なのだから。そして、子や孫を持つシニアの人たちに強く言っておく。騙されるお金があるくらいだったら、そのお金をもっと早くから子どもや孫に譲り、甘やかしてもいいからどんどん買い与えることでコミュニケーションを図り絆を深めていって欲しい。そうすれば、このような被害に会うこともない。極端なことを言うようだが、シニアの老後不安を解消し、もっと積極的に自分の資産を使い、永久凍土を溶かすには今のところこれしかないのだ。
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