人手不足が深刻な宅配企業、次の一手は?:新特集・進化する物流ビジネス最前線(2/2 ページ)
ネット通販の普及によって宅配便の取り扱い個数が急増。併せて顧客サービスの拡充にも取り組んできた宅配企業は今、現場が限界を迎えつつある……。
グローバル規模の事業展開を
確かに現状では業績を伸ばしている。しかし、今後の飛躍的な事業成長を考えた場合、これまでのように取り扱う物量をただ増やすというやり方では、人手不足という問題はますます大きくのしかかってくる。
これに対して当然、各社とも手を打とうとしている。荷主である顧客に対して適正料金収受を目指した運賃・料金値上げを推進するほか、効率的な集配システムの構築、主婦や外国人スタッフの登用などさまざまな施策を検討しているという。
一方で、国内消費市場が今後いっそう縮小する中、収益拡大に向けて海外市場の開拓もよりスピード感を持って取り組まなくてはならないだろう。2015年2月18日に業界3番手の日本郵便がオーストラリアの物流大手であるToll Holdingsを約6200億円で買収すると発表したのは格好の例だ。既に日本郵便は2014年10月に仏GeoPostおよび香港のLenton Groupと資本・業務提携を締結し、国際宅配便サービスを開始しており、今後はアジア市場への展開を中心にグローバルレベルでの総合物流企業としての地位獲得を鮮明に示している。
「従来、日本の物流会社は、商社やメーカーの後を追って海外に進出していた。これからは物流会社が先陣を切って新たな市場に打って出て、ビジネスインフラを作り上げるような戦略が重要かもしれない」(赤石氏)
人手不足という問題を抱えながらも、ビジネス成長の新たな果実を求めて立ち止まることは許されない。宅配大手の“三つ巴”による争いが今後ますます激しさを増すだろう。
ITmedia ビジネスオンラインの特集「進化する物流ビジネス最前線」では、宅配会社をはじめとする物流専業、さらには自前で物流の改革・改善に取り組むネット通販事業者などの取り組みを追う。次回はその中心的なプレイヤーであるヤマト運輸に迫る。
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