もうすぐ40年! 宅急便のこれまでとこれから:特集・進化する物流ビジネス最前線(3/3 ページ)
日本全国、翌日に荷物を送れる。通販で食品を買えば冷凍・冷蔵便で希望の日時に到着する……日本人にとっていまや当たり前になったサービス・宅急便はどのように進化してきたのか? 宅配業界1位のヤマト運輸に取材した。
近い将来、「当日配達」は実現するか?
宅配便は約40年前に登場して以来ずっと「荷物を翌日に配達する」サービスである。サービス開始時よりもエリアは広がっているし、追加料金を払うことで、2日かかるエリアを1日で送れるようにするなどのサービスはあるものの、「翌日配達」の原則は変わっていない。
宅急便がスピードアップして、“荷物を当日に配達する”ようにはならないのだろうか? 取材をしていて、その可能性を感じたのが「ゲートウェイ構想」だった。
前述の通り宅急便では、荷物は「送り主→営業所→ターミナル→ターミナル→営業所→届け先」というステップで届けられる。集荷した荷物は営業所からターミナルへ集められ、毎日夕方の決まった時刻までプールされる。夜間、トラックで届け先に近いターミナルへ運ばれ、翌朝ターミナルに届いた荷物は各営業所に運ばれ、そこから届け先へ配達される……という仕組みになっている。ターミナル間の輸送は1日1回なので、現在の宅配便は、締め切り時間までであれば朝出しても夕方出しても荷物が着く時間は変わらず、「翌日午前」が最短ということになる。
ゲートウェイ構想とは、関東、中部、関西にゲートウェイターミナルを設け、ゲートウェイ間は多頻度でトラックで荷物を運ぶというものだ。日中から幹線輸送を行うため、広域での当日配達が可能になる。ゲートウェイ構想のもう一つのメリットは、トラックドライバー不足に対応できる、という点だ。例えば東京から大阪までトラックを運転して往復すると約3日かかるが、昼間から輸送を行うことにすれば、東京〜名古屋、名古屋〜関西くらいであればドライバーは日帰りで往復して帰ってこられる。長距離ドライバーはなり手が少なく、高齢化が進んでいる。日帰りできるとなれば、募集もしやすくなるかもしれないと期待されているのだ。
送る人にも、受け取る人にも便利に。宅急便は、これからもさまざまな機能を拡充しながら、変化を続けていきそうだ。
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