「レジリエンス」ブームとサントリーの微妙な関係:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
「レジリエンス」という言葉をご存じだろうか。心理学用語で「精神回復力」と訳され、欧米では古くから定着している。日本でもメディアが報じたことで話題になっているが、このブームはサントリーにとって“追い風”になるかもしれない。その理由は……。
グラクソ・スミスクラインの判断
では、具体的に何をすればいいのか。そこで『世界一受けたい授業』や『クローズアップ現代』で例として挙げられたのが、「世界的製薬会社のレジリエンス研修」である。
両番組とも企業名は出ていないが、これは英国の製薬大手グラクソ・スミスクライン(以下、GSK)が8年前から行っている研修プログラムだ。
全力でのランニングを何度も繰り返すインターバルトレーニングなどがレジリエンスに効果があるということで、研修に参加した世界各国1万人の社員のうち約8割が、職場におけるメンタルヘルスを改善し、仕事のパフォーマンスが上がったという結果が出たんだとか。
体を動かすことは「うつ」にもいいとされているので、「そりゃそうでしょ」と思う人もいるかもしれないが、これだけではない。GSKでは独自の「レジリエンスにいい」という食事方法も社員に推奨しているのだ。どういうものかは『クローズアップ現代』の番組ページで詳しく紹介されている。一部引用しよう。
ポイントとなるのは、脳のエネルギー源となるブドウ糖(グルコース)。ブドウ糖が少なくなると集中力が落ち、感情の起伏が激しくなるといわれています。食事を少量ずつ3時間置きにする事で、ブドウ糖を一定のレベルに保ち、感情をコントロールする力を高めレジリエンスにつなげようというやり方です。(参照リンク)
これを聞いてちょっと意外に思った。以前コラムで紹介したが、「ブドウ糖(グルコーゲン)は脳の唯一の栄養分です」みたいな話は医学関係者のなかでも賛否両論ある(関連記事)。脂肪からつくられるケトン体でも十分賄(まかな)えることや、体には「新糖生」という機能があることが分かってからは、そこまで必要じゃないんじゃないのという見方も多くなってきている。
お菓子や健康食品のメーカーならば分かるが、EBM(evidence-based medicine:根拠に基づいた医療)を掲げて数多くの製薬を生み出している巨大製薬会社である。医療知識が豊富な社員もたくさんいるのだから、こういうダイナミックな研修プログラムを組んでツッコミが入ったりしないのか。
関連記事
- 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という証明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。 - なぜ成田空港が「ウォシュレット押し」なのか
成田空港内のトイレで、TOTOのウォシュレット設置率がアップする予定だ。現在、第1・第2ターミナルでの設置率は3割ほどだが、今年の9月には100%にするとか。それにしても、なぜ成田空港が「ウォシュレット押し」なのか。その理由は……。 - なぜ“バターみたいなマーガリン”が増えているのか
夏の猛暑が原因で、昨年スーパーの棚からバターが消えた。ここにきてようやく商品が並ぶようになったが、最近は“バター風マーガリン”が売れているという。少し前まではマーガリンがバターをうたう商品は少なかったのに、なぜ急に増えてきたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.