アシアナ航空の謝罪会見が遅かった背景に「3つの要素」:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
アシアナ航空162便が広島空港で着陸を失敗して、乗員乗客27名が負傷するという事故が起きた。アシアナ航空側の「広報対応」があまりにも遅いが、筆者の窪田氏は「その背景には3つの要素がある」という。それは……。
アシアナ航空の「戦略」
実は山村さんがメディアに囲まれて頭を下げていた数時間後、ソウル本社から金秀天(キム・スチョン)社長が到着し、広島空港事務所に謝罪を行っている。なぜちょっと待って、会見で社長に頭を下げさせないのか。愛国心溢れる方たちは、「あの国が日本人に頭を下げるわけがない」などとお怒りになっているが、これはそういうナショナリズム的なことではなく、アシアナ航空の「戦略」と受けとったほうがいい。
2年前もそうだった。ソウル本社では迅速に謝罪会見を開いた尹社長だったが、それは韓国国内の世論へ向けて頭を垂れたに過ぎない。米国に向けて発ったのは3日後で、しかも到着してからは特に会見もせず、被害者と面会をしたりNTSBへ寄ったりしてトンボ帰りで帰国をした。この態度に米国のメディアは、「韓国企業は危機管理が分かってない」とか「企業イメージ戦略の意識が遅れている」とかなんとか批判をしたが、実はそうではない。
事故発生直後からNTSBは、韓国政府の航空事故調査委員会への報告なしに「パイロットのミス」を示唆するような会見や情報の公表をたびたび行った。一方、アシアナ航空側はボーイング777が悪いというストーリーを主張して、「操縦士が悪いという印象操作をしている」といった批判を展開していた。そんな事故責任の押しつけ合いをしている最中、社長が頭を下げられるわけがない。
今回の事故も広島空港の靄(もや)がすごいだとか、ミヤネ屋の宮根誠司さんが指摘しているように「管制塔の指示が悪かった」的なさまざまな原因が語られている。パイロットの操縦ミスではないという一縷(いちる)の望みがある限り、親分に頭を下げさせませんよというわけだ。山村さんは副社長とはいえ元全日空で社歴は浅い。金社長が頭を下げるのとはまったく意味合が変わってくるのは言うまでもない。
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