自動運転の実用化で、社会はどう変わる?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/4 ページ)
ドライバーがハンドルを握らなくても、勝手に一般道を自動車が走る――自動運転技術の発展の結果、そんな未来がもう目前に迫っている。ドライバーが運転の責任を負わなくなったとき、社会は、日本はどのように変化するのだろうか?
事前に目的地を設定しておけば、ドライバーがハンドルを握っていなくても自動車が自律的に走る、自動運転技術。
一昔前まで、自動運転はハードウェアの自動制御技術をアピールするものに過ぎなかった。しかし近年、自動運転のレベルは飛躍的に向上している。もはやサーキットのようなクローズドコースを単独で走る程度なら、さほど難しいことではない。それどころかメルセデスベンツは2013年、一般公道100キロメートルを自動運転で走破した。緊急対応ドライバーが運転席でスタンバイしてはいたものの、他の自動車や歩行者も行き交う道を、自動車が自律的にロングドライブできるということを証明してみせたのだ。
一般公道で自動走行するためには、多くのクルマが行き交う中で多彩な判断プロセスが発生し、より複雑な処理が必要になる。他の車両や自転車、歩行者との距離や移動方向の予測に加え、右折、左折、合流、信号停止、状況に応じた速度調整など、その複雑さはクローズドコースとは比較にならない。
今年(2015年)、さらに一歩踏み込んだのがボルボだ。前回のコラムに書いた通り、一般ユーザーによる一般公道での運用テストをすると発表したのだ(参考記事)。ボルボの新システムは、運転者のスキルに依存しない。「事故が起きたらドライバーの責任」という従来の常識を覆し、「安全はシステムが担保するので、ドライバーには責任がない」としており、自動運転の新たな段階に突入している。
ボルボのこの運用テストには、スウェーデンが国を挙げて協力している。こうしたテストをするには行政の理解や協力が必須なので日本でこうした実験が行われるまではまだ時間がかかるだろうが、ボルボやベンツにできることはもちろん、日本の自動車メーカーにもできるだろう。自動運転車が一般道を走る未来は、そう遠くないところまで迫っているのだ。
もし、日本で自動運転が当たり前になったら、社会はどう変わるのだろうか? 今回はそれを考察してみたい。
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