自動運転の実用化で、社会はどう変わる?:池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)
ドライバーがハンドルを握らなくても、勝手に一般道を自動車が走る――自動運転技術の発展の結果、そんな未来がもう目前に迫っている。ドライバーが運転の責任を負わなくなったとき、社会は、日本はどのように変化するのだろうか?
自動運転の普及は、クルマだけでなく社会のあり方をも変える
このように、自動運転はクルマのあり方や、社会のあり方を大きく変える可能性を持っている。自動運転が「ドライバーのアシスト」という位置づけから「クルマの自律的自動運転」に移行することが、その基本になる。
こういう話をすると、クルマ好きの人たちからは「やがて(人間の)運転が禁止されるのではないか」とか「運転の楽しみが無くなる」という声が出るだろう。
アンチロックブレーキやトラクションコントロールが出始めた頃も、かなりネガティブな受け取り方をした人が多くいた。しかし、こうしたシステムは今ではスポーツドライブと十分な共存ができており(車種にもよるが)、ある程度の運転の自由さを保証した上で最悪のケースを防ぐ最後の砦(とりで)としての機能を果たしている。自動運転もそうした仕組みにすることは可能だろう。
今スポーツドライブを楽しめている人も、やがては老いる。手足が衰えたり、視力が衰えたりした時に「あなたはもう運転するのは無理です」と言われて素直に免許を返納できるだろうか? 自動運転はそうした身体能力の衰えを補ってくれる可能性もあるのだ。
ボルボの新たなシステムによって、自動運転は明らかにこれまでと違う、新しいステージに突入した。司法、立法、行政を含めた日本の社会がそれを前向きに受け止められるかどうか。それは日本の未来に直結する問題になりそうだ。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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