「チューハイ増税」に影響を与える“甲乙戦争”とはなにか:スピン経済の歩き方(1/4 ページ)
政府・与党が2016年度の税制改革で、チューハイの酒税引き上げを検討している。チューハイは低価格なので、庶民にとってかなりの痛手だが、増税を歓迎している人たちもいる。それは……。
スピン経済の歩き方:
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」を紐解いていきたい。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
政府与党が2016年度の税制改革で、チューハイの酒税引き上げを検討している。
現在、チューハイ1缶(350ミリリットル)当たりの税額は28円。これが1本150円前後というリーズナブルな価格の拠り所になっていただけに、庶民にはかなりの痛手である。
この背景には、アルコール依存症対策や未成年者の飲酒防止という世界的な潮流があると説明がされているが、最も大きいのは昨年から囁(ささや)かれている「酒税一本化」がある。
現在ビールの酒税は1缶(350ミリリットル)当たり77円、発泡酒は46.98円、第3のビールは28円となっているのだが、これをすべて55円に統一してしまうという案がある。ビール的には減税だが、発泡酒や第3のビールからすれば大幅増税になる。
こうなるとチューハイが断トツに安くなるので、発泡酒や第3のビールからどかっと客が流れる。メーカー側も収益性の良いチューハイばかりをつくってしまうので、健全な競走が阻害する恐れがある。要は、「チューハイのひとり勝ち」を避けようというわけだ。
ただ、そうは言っても納得できない人も多いだろう。発泡酒やチューハイという「庶民の味方」が値上がりすれば、何を飲めばいいのだという怒りの声も聞こえてくる。最近よく言われている若者の酒離れに、ますます拍車がかかって景気も悪くなってしまうのではないかという懸念もある。
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