エアバスの最新鋭機A350XWBに日本の技術はどう貢献している?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/3 ページ)
日本でもJALが導入予定のエアバス「A350XWB」。この最新鋭機に、日本の技術が貢献していることをご存じだろうか。製造が進む欧州各地の生産拠点のうち、南仏トゥールーズの本社工場と、独ハンブルク工場を訪問。日本の技術と、この最新鋭機とのつながりについて考察した。
エアバスの最新鋭機「A350XWB」(参考記事)の製造がヨーロッパの各拠点で着々と進んでいる。1号機は2014年12月にカタール航空に納入。ドーハからフランクフルトなどへの路線で運航を開始した。2015年夏には2社目となるベトナム航空へ、さらに秋以降には3社目のフィンエアーへの納入が予定されている。先日、エアバスの主要工場の一つである独ハンブルクと本社工場のある仏トゥールーズを取材で訪ねた際には、フィンエアーに納入する機体が組み立てられていた。
ヨーロッパ各地に協力工場が
A350XWBは他のエアバス機と同様、機体を構成する各コンポーネントの製造をヨーロッパ各地の協力工場が担当し、それらがトゥールーズの最終組立ラインに集められ最終形に組み上げられていく。たとえばイギリスのブロートンで製造された主翼(ウイングボックス)はドイツのブレーメンに運ばれ、関連する各種装備品をそこで装着。ドイツにはハンブルクにも工場があり、ここでは後部胴体と垂直安定板がつくられる。水平尾翼を分担するのはスペインのヘタフェだ。フランスでも最終組み立てラインがあるトゥールーズのほか、サン・ナゼールやナントなどの工場が稼働を続けている。製造拠点の一覧は以下のとおりだ。
エアバスの製造拠点一覧
- トゥールーズ工場(フランス)=最終組み立て
- サン・エロワ工場(フランス)=エンジン・パイロン部分の製造、組み立て
- ナント工場(フランス)=中央翼ボックス、キールビーム、レドーム、エアインレットの製造、組み立て
- サン・ナゼール工場(フランス)=前部胴体、中央胴体の組み立て
- ハンブルク工場(ドイツ)=後部胴体、胴体機首部の組み立て
- シュターテ工場(ドイツ)後部胴体上部/下部シェル、主翼上部カバーの製造、垂直安定板の組み立て
- ブレーメン工場(ドイツ)=フラップの製造、主翼の組み立て
- ブロートン工場(イギリス)=主翼ボックスの組み立て
- ヘタフェ工場(スペイン)=水平尾翼、胴体尾部の組み立て
- イジェフカス工場(スペイン)=主翼下部カバー、胴体尾部スキンの製造
- プエルト・レアル工場(スペイン)=水平尾翼ボックスの組み立て
特殊輸送機「ベルーガ」
エアバスの各拠点で製造されたコンポーネントを空輸するのに使われているのが、現在同社が5機を保有している特殊輸送機「ベルーガ」である。
私がハンブルク工場を訪れたとき、トゥールーズの本社工場からちょうどベルーガが到着。開閉部のある機首部分を工場内に突っ込み、完成部品の搬入作業を続けていた。ライバルのボーイングでも、787などは世界各地の協力工場で分担製造し、パーツを運搬するための特別機「ドリームリフター」が活躍している。ドリームリフターは日本でも中部国際空港で頻繁にその姿を見かけるが、エアバスのベルーガは残念ながら日本で目にすることはない。787は主翼や前部胴体などの主要パーツの製造を三菱重工業や川崎重工業などが請け負っているが、A350XWBのコンポーネントは日本で製造していないからだ。
では、エアバス機の開発・製造には日本の技術がまったく貢献していないのだろうか?
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