エアバスの最新鋭機A350XWBに日本の技術はどう貢献している?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)
日本でもJALが導入予定のエアバス「A350XWB」。この最新鋭機に、日本の技術が貢献していることをご存じだろうか。製造が進む欧州各地の生産拠点のうち、南仏トゥールーズの本社工場と、独ハンブルク工場を訪問。日本の技術と、この最新鋭機とのつながりについて考察した。
フィンエアーとJALが日欧の関係を変える
この連載でもレポートしたように、2014年11月、A350XWBのテスト機が日本(羽田)に降り立った(参考記事)。アジア諸国を回るデモツアーの一環としての初飛来だったが、ファンたちの注目を集めたのは、その1カ月前にJALがボーイング777の後継機としてA350XWBの導入(確定31機、オプション25機の計56機)を決定していたことだ。
日本のエアラインが運航する大型機といえば、これまではボーイングが主流だった。1980年代後半から導入された747-400に代わって国内外の幹線で活躍してきたのが777(トリプルセブン)。その777をJALは46機保有し、長距離国際線などで現在も運航を続けている。日本に777が大量導入された背景には、米国との政治的な結びつき以外に、国内航空機産業への貢献という意味合いもあった。前述した通り最新鋭機787では日本の製造分担比率が35%まで高まったが、777でも21%を国内メーカーが担っている。その777を導入することは、国内航空機産業への還元につながったのだ。
JALがA350XWBを受領する2019年以降は、同社の空の“主役”はボーイング機からエアバス機に置き換わっていく。国内の航空部品メーカーなども当然、エアバスへの製品や技術の供給能力を高めていく方向に動き出すだろう。それは、ボーイング1社に依存するリスクの回避にもつながるはずだ。
JALがA350XWBの運航開始を予定しているのは2019年だが、2016年にはフィンエアーのA350XWBが日本に就航すると予想されている。同社が発注した計19機ののうち、1号機がデリバリーされるのは2015年の秋。その前にはアジアで初めてベトナム航空にも納入されるが、私たちが日本からA350XWBに乗れるのはフィンエアーが最初になることは間違いない。北欧デザインを取り入れたキャビン仕様なども、すでに発表された。
フィンエアーのA350XWBの日本就航をいまから心待ちにしているファンも少なくないようだ。毎年夏期と年末年始の2回の海外旅行は欠かさないという女性(30代、証券会社勤務)は「ヨーロッパはどの都市に行くにもフィンランド経由が便利で、よくフィンエアーを利用します。成田からヘルシンキまでは新しいA350に乗れるとなると、旅の楽しさがぐっと広がりますね」と話している。
A350XWBという新しい飛行機での旅行機運の盛り上がりとともに、日本の航空機産業とエアバスとの距離が今後、どこまで縮まっていくのか? 注目していきたい。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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