地方鉄道活性化に「旅ラン」のご提案:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/4 ページ)
地方鉄道にとって、観光誘客は重要だ。最近の流行は内装にこだわり、食事を提供する観光列車だ。鉄道ファン向けの運転体験イベントなどもある。もっと欲張って、異分野からの誘客を考えてみたい。今回はマラソンの世界を学び、地方鉄道との親和性を探った。
「旅ラン」コミュニティにローカル鉄道を推薦
スポーツ大会に出場しなくても、旅先で気持ち良く走りたいという人々もいる。K氏の「首都圏温泉めぐりラン」のように、お気に入りのコースを自分のペースで自由に走るスタイルだ。ランナー同士で、オススメのコース情報を共有しようというコミュニティも立ち上がる。6月1日からベータ版サービスが始まる「Runtrip(ラントリップ)」だ。
Runtripの主な機能は「コース検索」「マイページ(お気に入りコース登録など)」「コースや拠点施設の投稿」の3つ。検索条件は地域、道のタイプ(ロード、トレイル、トラック、ビーチ)、オススメの時間帯、起伏、信号機や街灯の多少、拠点施設の設備などだ。コースの投稿ができるコースディレクターになるには簡単な審査があるとのこと。
コース検索結果には写真や地図が表示される。スマホからナビ機能を起動すると、初めての道でも迷わずに走れる。コース一覧を眺めてみたところ、京都の「竹のトンネルをくぐる道」や、シンガポールの夜景を楽しむ「マリーナベイ1周コース」など、走らなくても(?)散歩してみたくなる道がいくつかあった。
Runtripの代表の大森英一郎氏は、箱根駅伝出場経験があり、観光系事業会社で集客全般に携わる一方、NPO法人ランナーズサポート協会の理事を務める。観光とランニングを組み合わせたRuntripを普及させるために起業したという。大森氏に、地方鉄道とランニングの親和性について伺った。
「地方には素敵な道がたくさんあります。“道”を地域の資源(集客のコンテンツ)ととらえ、ランナーやハイカー、サイクリスト受け入れの体制を整えることで、局所的な集客だけに頼らない活性化に貢献できると思います」
地方鉄道の駅に、ランナーの拠点機能(ロッカー、シャワー、駐車場、更衣室、トイレなど)があった場合、人気コースになる可能性はあるだろうか。
「魅力的だと思います。それほど大きな投資を必要とせず実現できますし、新たに人を配置する必要もないため、持続可能性も高いと考えます。スポーツステーション機能が備わった駅があるとなれば、街としての魅力も向上すると思います」
旅ランの要素の1つに地方鉄道の魅力を加えていただく。ランナー歓迎の意思表示として、駅から出発するランコースの掲示や配布から始めても良さそうだ。ランニングファンに鉄道の旅を楽しんでいただき、鉄道ファンも「沿線ラン」という新しい趣味を開拓てきよう。乗り鉄と合わせて「走り鉄」というわけだ。地方活性化に取り組む皆さんのご参考となれば幸いである。
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