電気シェーバー市場で、日立だけが「ロータリー」にこだわり続ける理由:スピン経済の歩き方(3/5 ページ)
電気シェーバーを買おうと思ったら、「たくさんの種類があってどれを選んだらいいのか分からない」と感じた人もいるのでは。「回転式」「往復式」が多い中で、日立だけが「ロータリー式」を扱っている。その理由を調べていくと……。
25年を経た今も揺らいでない“自信”
それまで市場になかった「らせん状の内刃」は「第三の方式」と呼ばれ大きな注目を集めた。日経流通新聞(現・日経MJ)にもこのような記事が掲載されている。
「らせん状の刃が優れていることはかなり以前からわかっており、他メーカーもこれに関する特許を取得している。しかし、商品化に成功したのはわが社が初めて」。同社の熱器照明最寄品本部照明最寄品部最寄品グループの佐藤文昭副参事はこう言って胸を張る。最大のセールスポイントは「切れ味です」ときっぱり。何度か断念しかけながらも、十年を費やして開発にこぎつけた自信にあふれている。(日本流通新聞1990年6月16日)
この“自信”が25年を経た今も揺らいでないことは、岩倉課長の言葉からもうかがえるが、その思いをさらに強固にしているのは、単に「方式」にこだわっているのではなく、さらに新しいモノへと進化させているからだ。
「深剃りにこだわっていくと、やはり刃先を鋭角にしていくしかないわけですが、ただ単純に鋭角にしても耐久性に問題がある。そこで着目したのが日本刀です。刃先の最鋭角が25度から30度ですが、“引き切り”をすることで刃こぼれを防いでいる。このような構造を応用したのが、2010年に開発した“ドラムレザー刃”です」
それまでのらせん状の内刃ではなく、クロースウェーブ形状の内刃にしたことで、耐久性が増して最鋭角27度という鋭さを可能とした。さらに、編目になっている200枚の刃がヒゲに対して、2方向からの“引き切り”をより効率の良い深剃りを実現したのである。
だが、このように深剃りを追求していく岩倉氏たちの前に、避けては通れない「永遠のライバル」ともいうべき存在が立ち塞がる。競合他社ではない。
T字カミソリだ。
関連記事
- なぜ“バターみたいなマーガリン”が増えているのか
夏の猛暑が原因で、昨年スーパーの棚からバターが消えた。ここにきてようやく商品が並ぶようになったが、最近は“バター風マーガリン”が売れているという。少し前まではマーガリンがバターをうたう商品は少なかったのに、なぜ急に増えてきたのか。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。 - 「デキる男はチョコを食う」は本当か
デキる男はチョコを食う――。明治がサラリーマンを対象に調査をしたところ、年収の高い人ほどチョコを食べるという。信じられない話だが、筆者の窪田氏は「ビジネスパーソンのトレンドを踏まえると、この調査結果は納得できる」という。その理由は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.