なぜ小さなコンビニが、セブンより下でローソンより上なのか:水曜インタビュー劇場(コンビニ公演)(6/7 ページ)
エキナカにあるコンビニ「ニューデイズ」の業績が興味深い。1店舗の1日の売上高に相当する日販は、セブンが65万5000円、ローソンが51万9000円に対し、ニューデイズは57万円。小さなコンビニが、なぜ大手の一角に食い込むことができたのか。担当者に聞いたところ……。
女性客が多いのも特徴
土肥: 「朝は、おにぎり、菓子パン、サンドイチ、缶コーヒー、お茶、ジュースを置け!夜になったら、ビール、チューハイ、焼酎、日本酒、スルメ、ちくわ、枝豆を置け!」と命令するのは簡単かもしれませんが、現場で働く人にとっては負担が大きすぎますね。
笠井: あと、女性客が多いのも特徴なんですよ。他のコンビニは、男性8割、女性2割というところが多いのですが、ニューデイズの場合は男性6割、女性4割。いま看板を緑色にリニューアルしているのですが、リニューアル後の店舗をみると、女性客は5割に増えているんですよ。
土肥: それはなぜですか?
笠井: 分かりません。
土肥: 分かりませんって、笠井さん……。
笠井: 調査をしたところ「オシャレだから」「キレイになったから」といった声が多いのですが、「これだ!」という理由はまだよく分かっていません。女性客が多い店では「ジャスミンティー」がよく売れるのですが、「じゃあ、女性客が好みそうな飲料を増やして……」というわけにはいきません。
土肥: なぜですか?
笠井: ここでもスペースの問題が出てくるんですよ。女性客が好みそうな商品をどんどん増やして……となれば、男性客が離れていってしまうかもしれません。
土肥: 同じようなことを、とあるカツ丼チェーンを運営している人がおっしゃっていました。「ウチ(カツ丼屋)のお客さんの9割は男性。女性は1割しかいないので、女性向けの商品を増やせば全体的にお客さんが増えるのではないか。社内からそうした声があって、女性が好みそうなメニューを増やしたところ、男性客が離れてしまったんですよ。これはイカンということで、すぐに男性向けのメニューを増やしたところ、男性客が戻ってきました」と。
笠井: よく似ていますね。
土肥: 女性客を増やそうとしたら男性客が離れていってしまう。現場の担当者はバランスをどうとればいいのか。難しい作業になりますね。
ここで簡単におさらいをさせてください。小さなコンビニの日販が高い理由は、お客が多いから。限られたスペースの中でお客にスムーズに購入してもらうために、店内はさまざまな工夫をしている。また店自体が“広告”の役割も担っている。JR東日本グループの強みを生かして、駅、鉄道、コンビニをうまく“連動”させて、お客に「ジュースを飲みたいなあ」「おにぎりを食べたいなあ」といった“買いたくなる仕掛け”をしているわけですね。
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