なぜ大井川鐵道の経営再建に北海道のホテル会社が?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/4 ページ)
トーマスは大人気だけど経営事情は厳しい。そんな大井川鐵道の事業再生支援が決まった。筆頭株主で取締役4人を送り込んでいた名鉄は撤退し、北海道のホテル再建を手掛けた企業がスポンサーとなる。一体なぜか。そこには名鉄の良心があるようだ。
支援申込時に「エクリプス日高」は決まっていた
大井川鐵道が地域経済活性化支援機構に支援の申し込みをするにあたり、北海道のスポンサーが名乗りを上げたと報じられた。この会社、エクリプス日高は名鉄が推薦したと私は思っている。今回の事業再生の報道を読むと、地元に見切られた名鉄が大井川鐵道から逃げ出したようにも見える。しかし、名鉄はそれほど無責任な会社ではない。むしろ、名鉄は自分よりもふさわしい経営陣に大井川鐵道を託したといえる。
そもそも、なぜ大井川鐵道の支援が地元企業や他の鉄道会社ではなく、遠い北海道のホテル会社か。この会社は地域経済活性化支援機構が募集したわけではない。大井川鐵道と主要取引銀行の静岡銀行が、再生計画案のスポンサーとして挙げた会社である。地域経済活性化支援機構は、その申請内容を審査し「問題なし」と判断したに過ぎない。
地域経済活性化支援機構は国が「株式会社地域経済活性化支援機構法」に基づいて設置した。前述の「産業再生機構」と似た経緯だ。主要株主が預金保険機構という点も同じ。「有用な経営資源を有しながら過大な債務を負っている中小企業者その他の事業者の事業の再生の支援及び地域経済の活性化に資する事業活動の支援を行う」(参考サイト)。
同機構に聞いたところ、法律に基づき「企業の支援については、企業単独の申し込みは受け付けません」という。「通常は、企業と主要債権者、たとえば主要取引銀行が共に支援を申し込み、機構側でスポンサーを探します。ただし大井川鐵道については、申込時に大井川鐵道、静岡銀行とともに、エクリプス日高がスポンサー候補として挙げられていました」とのこと。地域経済活性化支援機構法としては手間が省けたわけだ。
では、エクリプス日高と大井川鐵道の縁は何だろうか。エクリプス日高の社長で大井川鐵道の社長にも就任予定の前田忍氏が鉄道ファンであるとか、蒸気機関車に思い入れがあるとか。あるいは沿線に系列のホテルを作り本州進出か……。エクリプス日高に問い合わせてみたところ「発表されている以外はお答えいたしかねます」とのことだった。
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