ITだけではない、インドは隠れた宇宙大国か?:宇宙ビジネスの新潮流(2/2 ページ)
「IT大国」で知られるインドだが、実は数十年前から宇宙開発に力を入れている。昨今は宇宙ベンチャー企業の台頭も目立つようになってきた。
月面無人探査レース出場のベンチャーも
このように従来は、ISROと周辺企業や大学を中心に育ってきたインドの宇宙産業だが、近年はベンチャー企業による宇宙ビジネス分野への進出も始まっている。
Axiom Research LabsはTeam Indusというチーム名で国際的な月面無人探査レース「Google Lunar XPRIZE」に参加している宇宙ベンチャーだ。リーダーのラウル・ナラヤン氏を中心に、20人強で構成されており、事業&技術アドバイザーには航空防衛大手の米Lockheed Martin、通信機器大手の仏Alcatel-Lucent、ISROなどの元シニアメンバーが名を連ねる。2015年1月の中間賞では、Landing部門(月面着陸のための飛行制御技術を競う部門)を勝ち取り、賞金100万ドルを受け取るなど技術評価も高い。
元Yahoo! Indiaの研究開発部門トップであり、Team Indusの投資メンバーでもあるシャラド・シャルマ氏はメディアに対して「インドは世界的に興隆している民間宇宙ビジネスのハブの1つになり得る。インドには設計指向の製造システム、組み込みソフトウェア、航空宇宙分野に関する経験を有しているという利点がある」と語るなど、インドならではのポテンシャルに高い期待を寄せる。
Dhruva Spaceは2012年にバンガロールに創業した衛星ベンチャーで、創業者のサンジャイ・スリカンス・ネカンティ氏は大学時代に超小型衛星プロジェクトに参画していた。事業ドメインは10〜100キログラムの小型衛星で、開発・製造コンセプトは「Frugal innovation(倹約、ミニマリズム的視点での革新)」や「Jaggad(創意工夫)」だ。3Dプリンターや民生品の活用などによりコストを10分の1程度に下げるほか、開発・製造期間を18カ月に抑えるなど、徹底したローコストオペレーションを目指す。
同社はモディ首相が推進する「Make In India」イニシアチブの下、独Berlin Space Technologiesとの提携を発表し、インド国内に初となる小型衛星製造工場を建設する計画だ。さらに、将来的な衛星アプリケーションの開発のために、IT/ビッグデータ関連企業との提携も模索していくという。
このように、政府を中心とした長い宇宙開発の歴史に、新しいベンチャーが生まれているのがインドの宇宙ビジネスの現状だ。今後も引き続き注目したい。
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