お菓子の新商品が、なかなかヒットしない理由:水曜インタビュー劇場(お菓子公演)(5/6 ページ)
スーパーやコンビニに足を運ぶと、たくさんのお菓子が並んでいる。しかし、よーく見ると、いわゆる“定番モノ”ばかり。なぜ、こうした現象が起きているのか。お菓子勉強家の松林さんに話を聞いたところ……。
2000年代のお菓子事情
松林: 80年代は松田聖子さん、90年代は安室奈美恵さんに、人気が集中していましたが、90年代後半ころになると、Aさんは○○が好き、Bさんは○○が好き、Cさんは○○が好きといった感じで、みんなの好きが分散化する傾向が出てきました。お菓子の世界も同様に、それまではチョコであればポッキーとキットカットがあれば満足という人が多かったのですが、このころになるとさまざまな商品に目がいくようになりました。
そして、2000年以降になると、素材だけでなく、エッジの立った商品が増えてきました。例えば、2003年に「暴君ハバネロ」(東ハト)。各ジャンルにさまざまな商品が出てきたことで、消費者の間である動きが出てきました。それは「迷い」。
自分はどれを食べたらいいんだろうと。そうした消費者の不満が届いたのでしょうか、PB商品が増えてきました。多くの男性は食べ物に関して浮気をしないので、PB商品で“いつもの味”を楽しまれるようになりました。
土肥: 時代の影響を受け、お菓子もさまざまな商品が増えていった。しかし、消費者の間に「どれを選べばいんだろう」という迷いが生じ、その課題を解消するかのようなモノが登場した。それがPB商品。結果、新商品が生まれにくい環境になったわけですね。
松林: はい。
2000年以降に発売された主なお菓子
発売年 | メーカー名 | 商品名 |
---|---|---|
2000 | キャドバリージャパン | リカルデント |
2001 | ハウス食品 | さわやか吐息 |
2001 | ブルボン | チョトス |
2003 | 東ハト | 暴君ハバネロ |
2003 | 江崎グリコ | ポスカム |
2005 | 江崎グリコ | GABA |
土肥: お菓子のヒット商品が生まれにくい背景を探っていくと、音楽業界もちょっと似ているところがあるのかなあと思いました。かつては、松田聖子さんや安室奈美恵さんのような時代を代表する歌手の音楽を聴いていれば、多くの人は満足していました。実際、子どものころに流行った音楽って、大人になっても歌えますよね。例えば、40代半ばの女性であればピンクレディーの『UFO』は歌って踊れる。
一方、いまの子どもたちはどうなのでしょうか。私は○○が好き、オレは△△が好きといった感じで、好みの多様化しているので、大人になったときに一緒に歌える曲が少ないかもしれません。嵐とかAKB48の曲くらいかな。
ということは、いまの子どもたちが大人になったときに「昔、どんなお菓子を食べていた?」と聞かれても、出てくる商品名はバラバラ。なので「私もそれが好き」「オレもよく食べていた」といった会話が成立しにくいかもしれません。
松林: ひょっとしたら食べたことがないかもしれません。いまは「お菓子を食べてはいけません」という躾(しつけ)をされている親が増えてきているそうなので。
関連記事
- なぜ小さなコンビニが、セブンより下でローソンより上なのか
エキナカにあるコンビニ「ニューデイズ」の業績が興味深い。1店舗の1日の売上高に相当する日販は、セブンが65万5000円、ローソンが51万9000円に対し、ニューデイズは57万円。小さなコンビニが、なぜ大手の一角に食い込むことができたのか。担当者に聞いたところ……。 - 受注を減らしたのに、なぜ「チョコモナカジャンボ」は3倍も売れたのか
森永製菓のアイスクリーム「チョコモナカジャンボ」が売れている。売上高は14年連続で伸びているが、その背景にはどんな“仕掛け”があったのだろうか。同社のマーケティング担当者に話を聞いた。 - もう振込用紙を持って来ないで! コンビニが「収納代行」を止めたい理由
「電気・水道・ガス・電話などの利用料金はコンビニで振り込んでいる」という人も多いだろう。しかしこの「収納代行」……とにかく面倒で、コンビニオーナーだけでなく本部も「止めたい」と思っているのではないだろうか。 - なぜセブン-イレブンは“王者”であり続けるのか
セブン-イレブンの快進撃が止まらない。2014年4月に消費税が増税され、他のコンビニが苦戦する中、セブンは売り上げを伸ばした。セブンカフェやセブンプレミアムなど、なぜヒット商品を生み出すことができるのか。現役コンビニオーナーの川乃もりやさんに話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.