レノボとNECから学ぶ“賢い”事業統合の進め方:トップインタビュー(2/3 ページ)
グローバル規模での企業のM&Aが活発だ。だが、異なる組織の統合には課題も多い。そうした中、相次ぐ企業買収により収益を着実に伸ばしているのがレノボ・グループである。事業統合に携わったレノボ・ジャパンの留目社長がその勘所を語った。
統合のミーティングに各国から200人以上が参加
留目氏は2011年にレノボ・ジャパンとNEC PCの事業統合の責任者に就任。以来、約1年がかりで統合を完了に導いた。そこでの取り組みは、「偏見のない目で観察し合い、互いの強みを理解すること」、「統合すべき組織と残すべき組織を切り分けること」、「統合に向けたプロセスを明確化すること」という3つのフェーズから成るという。
だが、その過程では苦労も強いられたという。中でも手を焼いたのが、統合に向けたグローバルでの意見調整である。レノボ・グループは「地域」と「機能」によるマトリクス型の組織形態を採用。一方で、NEC PCは研究開発から調達、製造、マーケティング、サービスサポートまで一貫した機能を備えている。必然的に多様な社員が統合にかかわることとなり、電話会議の参加者は多いときで200人を超えた。
「寄せられる意見はさまざま。日本の業績を、現状の評価指標で管理できるのかという声もあれば、ある部署の完全統合の時期を問う声もある。これらの議論の過程では、グローバルとローカルのバランスをとる上で参考にすべき意見も数多く寄せられた。日本人だけの作業では、それらに気付くことは到底困難。これもレノボの多様性の恩恵だ」(留目氏)
国内ではレノボとNECが法人格として個別に存在しているが、兼務出向などの社内制度の利用を通じ、経営会議にはレノボとNEC PCの双方の担当者が参加するなど、事業統合により両社の組織的な結合度が強化された。経営陣には適材適所で人材を採用し、レノボとNECの出身者が半数ずつを占める。その成果は、コンシューマー向けPCにおけるレノボの国内シェアが出荷台数ベースで今年3月に一時は40%を突破するといった数字に表れている。「NEC PCの良さを残しつつ、レノボ・グループとした新たな成長力を付加することができた」と留目氏は胸を張る。
NEC PCの統合プロジェクトはレノボ内でも高く評価され、留目氏は統合が完了した2012年からレノボ本社の戦略部門に異動。そこで与えられたミッションは、NECの統合プロジェクトで蓄積したノウハウのグループへの移植である。
「統合の具体的なステップやチーム構成、スケジュール、検討項目などを本社に残してきた。現在、レノボではモトローラ・モビリティやIBMのx86サーバ事業の統合作業が行われているが、それらの進め方はいずれもNEC PCの事業統合が手本となっているのだ」(留目氏)
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