レノボとNECから学ぶ“賢い”事業統合の進め方:トップインタビュー(3/3 ページ)
グローバル規模での企業のM&Aが活発だ。だが、異なる組織の統合には課題も多い。そうした中、相次ぐ企業買収により収益を着実に伸ばしているのがレノボ・グループである。事業統合に携わったレノボ・ジャパンの留目社長がその勘所を語った。
家電との連携とビジネス向け用途開拓の両輪
レノボがNEC PCに寄せる期待は大きい。その理由の1つが、「国内で早期から個人向けPCを提供し、そこで成功した歴史と信頼がある」(留目氏)ことだ。
とはいえ、この10年を振り返ると、PCメーカーは総じてCPUやOSのロードマップに沿った製品開発により、独自の付加価値提案を怠ってきた感があるのは否めない。一方で、スマートデバイスの普及を背景に、PCを不要ととらえる層も若者を中心に増えつつある。こうした中、レノボが国内でのPCの拡販に向け注力を計画しているのが、テレビなどの家電を含めたあらゆるデバイスとの連携である。
「PCメーカーである我々のミッションは、究極的にはコンピューティングパワーを日常に溶け込ませて暮らしを豊かにすることにある。現状の環境を概観すると、各デバイスが独立して機能し、それらでの情報のやりとりはほとんど存在しない。ミッションを遂行するためにも、今後はデバイス連携のための、業界の垣根を越えたエコシステムの確立に取り組む考えだ」(留目氏)
日本では企業でのノートPCの社員配布は十分ではなく、社外利用を禁じるケースも多い。その用途も、ワードやエクセルなど業務に関連したアプリケーション利用にとどまるのが実情である。「十年ほど前からPCの利用に進化がない」と留目氏は嘆くが、リーディングカンパニーとして現状を打破するためのPCの新たな利用シーンの提案も必要とされる。温めているアイデアももちろんある。
「例えば音声認識技術。商談内容の記録を出発点に、議事録の作成や社内での自動共有、さらに内容を解析することで次の商談のレコメンデーションにつなげることも技術的にあと一歩のところまで来ている。IBMのx86サーバ事業の買収を通じ、業務を支えるクラウドのためのリソースは既に手に入れている。PC市場は飽和していると見られがちだが、満たされていないニーズは確実に存在する。ニーズと技術の溝を埋めることで、我々は次なる成長軌道を必ずや描けるはずだ」(留目氏)
レノボ・グループにおいて日本地域の担う役割は今後、さらに増すはずだ。実際に、「LaVie Hybrid ZERO」はクラムシェル型で779g、2-in-1型で926gというできばえがグループ内で高く評価され、当初は予定されていなかった「2015 International CES」への出展に漕ぎ着ける。その結果、「BEST PC賞」をはじめ、合計で24ものアワードを受賞したが、「今後は経済成長に伴い、他国でも日本向け製品の採用割合が増えるはず」と留目氏は見る。
日本発のPCがグローバル市場をどう変えるのか。日本のモノづくりの力が改めて試されている。
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