えっ、予定通りに飛んでいない? 機内で何をしているのか、パイロットに聞いてきた:水曜インタビュー劇場(パイロット公演)(2/7 ページ)
晴れている日もあれば、雨の日もある。無風のこともあれば、風が強いこともある。さまざまな状況の中で、パイロットはどのような会話をしているのか。JALの機長に聞いてきた。
さまざまな状況を判断して、決断
土肥: パイロットって職人気質で、あまり多くを語らない。無線や電話などを通じて客室乗務員や管制官と話すくらいで、あとはじーーーっと前を見て操縦している。うまく着陸できれば声を出さずに、冷静に心の中で喜んでいる。そんなイメージが強いのですが、実際のところはいかがでしょうか?
酒巻: 多くの人はパイロットって「飛行機を操縦するだけ」といったイメージを持たれているかもしれませんが、実はたくさん話をしているんですよ。
さまざまな状況を判断して、決断をしなければいけません。何かを決めるにあたって、機長ひとりが「こうする」「ああする」「そうする」というのではなく、機長と副操縦士が互いに「こうしよう」「ああしよう」「そうしよう」と確認しながら物事を進めていきます。決断するときには、2人のコミュニケーションがうまくとれていないとできないんですよね。
土肥: 例えば、どんなことを?
酒巻: 飛行機を飛ばすときに、燃料はいつも満タンではありません。燃費のことを考えて、必要な量だけを入れています。どのくらい入れるかは、その日の天候など、いろんな条件によって変わってきます。
土肥: 今日は快晴だから燃料は少なめで、といった感じですか?
酒巻: 基本的にはそうですね。天候が悪くて着陸をやり直す可能性が高い場合には、違う空港に着陸するかもしれません。そうしたことが考えられるので、燃料は多めに入れなければいけません。通常時と比べてどのくらい多めに燃料を入れればいいのか――そうしたことを決めなければいけません。
あと、どのくらいの高さを飛ぶかを決めなければいけません。高く飛べば飛ぶほど空気が薄くなるので、機体にかかる空気抵抗が少なくなって、前に進みやすくなります。しかし、揺れやすい高度、揺れにくい高度、飛べない高度などがある。さまざまな制約がある中で、どの高度を飛ぶのかを決めなければいけません。
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