同じような本が何冊も出てくるワケ:新連載・出版社のトイレで考えた本の話(2/5 ページ)
書店に並んでいる本を見て、「よく似たモノが並んでいるなあ」と感じたことがある人も多いのでは。例えば、ピケティの本が話題になると、それに関連する本が相次いで刊行されたが、なぜこうした現象が起きるのか。現役の書籍編集者によると……。
テーマ集中よりえげつない「著者」への集中
「売れるテーマ」と同じように、「売れる著者」にも出版社のオファーが集中する。5万部、10万部を超えるようなベストセラーを書いた著者の事務所には、配給を待つ飢えた人々のように、長蛇の列ができることになる。そしてオフィスの中ではこんな打ち合わせが繰り広げられる。
編集者: それにしても山田先生、初めて書いた『部長代理の仕事術』が1カ月で7万部突破って、マジでスゴいですよね。
著者: いえ、そんな。あの本は、東亜経済出版の編集さんがすっごく力を入れてがんばってくれたんですよ。本当にあそこの会社には足を向けて寝られないです。
編集者: いやいや、先生のいい原稿があったからでしょ。ウチとしても、先生の2作目、ひょっとすると3作目か4作目かもしれませんけど、ぜひ書いてほしいなって。ウチはそこらの中小の出版社とは違いますんで、先生にパーッと書いていただいたら、ガーッと本にして、バーンと売りますんで。
著者: ……すみません、2作目は、お世話になった東亜経済さんで書くと決めているんです。あと、社名は申し上げられないんですが、3作目、4作目も別の会社で決まっていまして。お声掛けいただいた順番通りにいくと、御社は……8番目ぐらいになりそうです。1年以上先になってしまうかと。
編集者: ええっ、そんなに! でも、先生の本が出せるんであれば、喜んで待たせていただきます。待たせていただくんですけど、多少なんとかならないですかねえ、4番ぐらいとか。
著者: いや、それはさすがに……。ともあれ、他社さんとテーマがかぶるといけないので、先にそこから詰めましょう。どんなテーマで考えていらっしゃるんですか?
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