「言い間違い、聞き違い」をなくすために、パイロットは何をしているのか:水曜インタビュー劇場(パイロット公演)(2/5 ページ)
パイロットは飛行機を操縦し、お客さんを運ばなければいけないので、スタッフとのコミュニケーションにエラーが生じてはいけない。ミスをなくすために、彼らはどんな教育を受けているのか。JALでパイロットの“先生”をしている人に話を聞いたところ……。
塚本: そうなんですよ。実際に行ってみると、理由から話し出してしまい、結論が見えにくくなってしまう。普段会話をしていて、「自分はあいまいに話しているなあ」と気づかされますね。
話し方のポイントとしては(1)結論を先に言う(2)ナンバーリングを用いる(3)総括する――。これって英語の論理構造と似ているんですよね。英語文章のパラグラフを分解すると「トピックセンテンス」(段落の一文目で結論)、「サポーティングセンテンス」(理由・根拠説明)、「コンクルーディングセンテンス」(まとめ)という流れになっています。
土肥: 逆の例は、国会の答弁ですかね。聞かれていることに答えない(笑)。パイロット2人の間で、聞かれていることに対して答えない……こんなことを繰り返していてはダメですよね。この高度はどうだろうか? いやいや、そこは風が強い。じゃあこの高度は? いやいや、そこは雲が多い。だったらこの高度は? いやいや、そこは風水的によくない。こんな会話を繰り返していては、いろいろと問題。
塚本: 私たちは、聞かれたことに対して、ダイレクトに答える。そうした訓練をしています。
土肥: 日本人は、そうしたことが苦手ですよね。阿吽(あうん)の呼吸、空気を読むといった文化がある。
塚本: ですよね。言わなくても分かってよ、この人が言うのであればオレも賛成、とか。でも、パイロットはそれではいけません。結論を先に言う。自分の意見はこうですと。そして、なぜそう思うのか理由を言って、話をまとめる。
もちろん、理由をダラダラしゃべる日常会話を否定しているのではありません。パイロットは短時間で状況を判断して決断しなければいけないので、効率的なコミュニケーションが必要。なので「結論→理由→まとめ」の流れで会話をしているのです。
土肥: 言語技術教育を導入される前は、どんなことをされていたのですか?
関連記事
- えっ、前の飛行機を抜いてもいいの? パイロットの知られざる世界
パイロットといえばエリート中のエリートというイメージがあるが、飛行機を操縦しているときどんなことを考えているのだろうか。JALでボーイング777の機長を務める近藤さんに話を聞いたところ、意外な答えが返ってきた。 - 飛行機は本当に「安全」なの? 現役パイロットに聞いてきた
ここ数カ月、飛行機の墜落事故が相次いでいるので、不安を感じている人も多いのでは。「飛行機は最も安全な乗り物」と言われているが、本当にそうなのか。JALの現役パイロットに聞いてきた。 - なぜ新幹線は飛行機に“勝てた”のか
鉄道の未来は厳しい。人口減で需要が減少するなか、格安航空会社が台頭してきた。かつて経験したことがない競争に対し、鉄道会社はどのような手を打つべきなのか。鉄道事情に詳しい、共同通信の大塚記者と時事日想で連載をしている杉山氏が語り合った。 - 生産台数9000万台超! ホンダのスーパーカブがスゴい
世界中で販売されているスーパーカブ(ホンダ)の累計生産台数が9000万台を超え、あと数年で1億台を突破しそうだ。50年以上前に発売されたスーパーカブは、なぜ今でも売れ続けているのだろうか。ホンダの広報部に聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.