“ふわっとした話”にどっと押し寄せる、日本人の「弱み」:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
日本の重要文化財などを補修している小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長の新著が発売された。タイトルは『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』。筆者の窪田氏がその本の中で特に興味をもったのは……。
日本人の「強み」と「弱み」を冷静に分析
そんな「分析」にこだわってきたデービットさんの新著が先日発売された。『イギリス人アナリストだからわかった日本の「強み」「弱み」』(講談社α新書)である。
本書では、日本人にはあまり気づくことのない強みと弱みを冷静に分析している。日本はとにかく世界のなかでいかに優れているのかというような本が多いなか、かなり辛口の批評も含まれている。そのなかでも個人的に非常に腹オチしたのが、日本人の多くが「woolly thinking」ではないかという指摘だ。
woolly thinkingとは、直訳すると、「羊毛みたいにふわっとした思考」、意訳すれば散漫な思考となります。
woolly thinkingによって、しなければならない改革のために必要な、インテレ(intellectual:国策などの議論を形成したり、議論に影響を与えたりすることができる人々)による議論の焦点が決まらず、そのために社会が進歩せずに。いつも表面化した問題の事後処理をするだけになってしまう傾向が強くなるのです。(本文120ページ)
デービッドさんがこのように指摘するのは、実体験によるところが大きい。不良債権問題で当時、ソロモン・ブラザーズ証券のアナリストだったデービッドさんたちは試算して、大手銀行の不良債権が20兆円はくだらないという事実と、その問題解決にいたる道筋までをアナリストレポートで発表した。
しかし、多くの日本人はこの提言に耳を貸さなかった。金融庁や銀行幹部は大激怒し、レポートを事実無根と批判した。それだけではない。「ソロモン・ブラザーズはCIAの手先で日本経済を混乱させようとしている」なんて陰謀論まで巻き起こり、会社には街宣車がやって来て、脅迫じみたファックスが送られてきた。結局、デービッドさんは会社から一時海外退避をするように命じられ、日本を離れるまでの“炎上レポート”になってしまったのだ。
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