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「ゴーストライター」のホントのお仕事:出版社のトイレで考えた本の話(4/6 ページ)
「ゴーストライター」と聞いて、「なんだか怪しいなあ」と感じた人も多いのでは。しかし、ビジネス書や実用書などの世界では、非常にポピュラーな存在だ。なぜなら……。
ビジネス書が文字で伝えているものって何?
では、ビジネス書や実用書が読者に伝える「本質」とはなんだろうか? 基本的にこれらの本は、著者の「ノウハウ」や「考え方」を伝えること、つまり何らかの「説明」が中心だと筆者は思っている。
ひと目で分かるように、ビジュアル的な例を挙げよう。下の図を見ていただきたい。「政府広報オンライン」というサイトに出ている、正しい手の洗い方の説明である(※)。運営からして「内閣府大臣官房政府広報室」という、いかつい名前の機関なので、洗った後の手は最低でも無菌状態ぐらいにはなりそうなイメージがあるが、内容はいたって普通である。
(※)記事自体は「インフルエンザの感染を防ぐポイント」という話の中で、石けんでしっかり手を洗おうね、という流れで説明がされている。
こうした説明のための絵で重要なのは、あくまで「伝わりやすさ」「分かりやすさ」である。オリジナリティはそれほど求められないし、水墨画風にする必要もなければ、アバンギャルドな色遣いにする必要もない。分かりやすいことが何より最優先だ。こうした絵の描き手には、「手を洗うというノウハウを、いかに分かりやすく見せるか」は厳しく要求されるが、「新しい手の洗い方」を編み出すことはあまり期待されてはいない。
「正しい手の洗い方」の絵もイラストレーターがいるはずだが、こうした場合に描き手の名前がクレジットされるのはまれである。
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