本当のエグゼクティブは、決して「裸の王様」にならない:外資系エグゼクティブの働き方(1/2 ページ)
エグゼクティブは、格下の者の意見でも受け止める自信と度量を備えています。彼らはそこに問題解決の糸口や、仕事に有利な情報がある可能性を理解しているからです。どんなに偉くなっても、「裸の王様」になり得る危険性を十分心得ています。
集中連載:「外資系エグゼクティブの働き方」について
この記事はフラナガン裕美子著、書籍『どの会社でも結果を出す「外資系エグゼクティブ」の働き方』(日本実業出版社)から一部抜粋、再編集したものです。
グローバル化が進むなか、「ここは日本だから……」という言葉はもはや通用しません。「どの会社でも上に行ける人」には、5つの共通点があります。
・行動法則1:「正しいワンマンスタイル」で人を動かしている
・行動法則2:世界基準の「リスクヘッジ力」と「決断力」を磨いている
・行動法則3:時間に支配されずに、自ら「コントロール」している
・行動法則4:「謙虚さ」と「プライド」を併せ持っている
・行動法則5:「柔軟性」を持ちながらも、「信念」はブレない
本連載では、数々の外資系企業で“モンスターボス”たちをサポートしてきた敏腕秘書が、数々のエピソードとともに世界中どの会社でも「結果を出す人」の共通点について紹介。日本企業のリーダーにこそ知ってほしい、世界基準のマネジメントのポイントをおさえます。
「愚か者と思われたくない」という見栄
「上昇志向」と同時に、エグゼクティブには、その支えとなる内に秘めたものがあります。
アンデルセンの童話に「裸の王様」の話があります。王様が「愚か者には見えない見事な布」を詐欺師に見せられ、実はそこには何もないのに「愚か者、痴(し)れ者」と思われたくない、その見栄と保身のために、まるでそこに実在しているかのように布をまとい、周囲も王様に振る舞う話です。
この話のどこに問題があったか、あらためて考えてみましょう。まず、布が見えないのにもかかわらず、王様が自らを「愚か者」と思われたくない見栄のために、「見えない」と真実を言えなかったことです。もし自分に絶対的な自信があれば、「見えない」と言えたはずです。誰がどう思おうと、事実、自分には見えないのですから。
次に側近たちです。自分たちにとって大切な王様が国民の前を裸で歩いて、恥をかくことを許してしまった。その背景には、「王様から愚か者と思われたくない」「他の人が見えるのに、自分だけが見えないなんて恥ずかしい」「愚か者と思われたら職を失う」、そういった思惑が交錯していたはずです。
でも、もし王様が常日頃から、一方的に上から目線で物を言うトップダウンのマネジメントではなく、必要とあれば自分の意にそぐわない意見でも聞き入れる度量を持っていたら? そして「部下の能力を信じている」というメッセージを送り続けていたら? 絶対的な信頼関係が築かれていたら? きっと側近の誰かが、王様に本当のことを伝えていたはずです。
「自信」があればどんな人にも意見を出せる
こうした話は、日常のビジネスシーンのあちこちで見られます。この根底にあるのは「自信」です。自信があると正しいと思ったことを周囲に伝えるのはもちろん、周囲からの批判にも耳を傾けられます。
ボスにとって、自分の耳に痛いことを、ましてや自分より格下の者から言われるのは決して面白くはありません。ですが、上に行けるエグゼクティブたちにはそれを受け止める自信と度量を備えた人が多いのです。なぜなら、彼らはその中に、貴重な意見や仕事へ優位に働く情報があるかもしれないことを理解しているからです。
自らも部下だったときに、上司に対して自分の考えを忌憚(きたん)なく述べられることの有難さと重要さを学んできています。ですから、自分がどんなに偉くなっても、裸の王様になり得る危険性を十分承知しているのです。
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