西武鉄道の銀河鉄道999プロジェクトに「原作愛」はあるか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
アニメ大好きな西武鉄道が、また新しいプロジェクトを立ち上げた。しかし今回は主役ではなく参加者側。「銀河鉄道999 現実化プロジェクト」という大きな枠組みの中で、鉄道現業部門として参画する。夢は大きく広がるけれど、原作ファンとしては心配なところもある。
夢は広がる、しかし共有できているか?
銀河鉄道999 現実化プロジェクトについては、ITmediaニュースなどで紹介されている。詳しくは記事を読んでいただくとして、発表会とその後のシンポジウムを拝聴して、少し気になった点がある。それは、登壇者の原作に対する思いに温度差が大きいことだ。
発表会では原作者の松本零士氏、主題歌を担当したタケカワユキヒデ氏が登壇した。この2人の原作への思いは疑いようがない。地元代表として登壇したアニメ監督の岡尾貴洋氏も、かつて松本零士氏原作のアニメ「コスモウォーリアー零」に参加し、本件をきっかけにNPO法人アニメと漫画の聖地ねりま創世会の事務局長を引き受けている。ゆめーてる商店街会長の貫井武彦氏も、3000系「銀河鉄道999」への強い思いがあるようだ。
西武鉄道の代表として出席した手老善氏は、鉄道ファンを自称しつつ、鉄道ビジネスとのバランス感覚に長けた人物だ。銀河鉄道999の世代と言えそうだけど、ちょっと若いから「銀河鉄道物語」かもしれない。ちなみに手老氏は、かつてジェイアール東日本企画に勤務し、私の連載コラムで紹介した「鉄道キャラメル」の開発に携わった人物だ(関連記事)。鉄道を紹介するテレビ番組にもかかわっていて、「タモリ倶楽部」ではジェイアール東日本企画時代に企画で、西武鉄道の担当者として出演も果たした。
シンポジウムに登壇した科学者諸氏も好感が持てた。機械の身体の実現性を語る比留川博久氏は銀河鉄道999の読者であった。松本零士氏に直接レクチャーするとあって感激しつつ緊張しておられた。元JAXAの小林智之氏は、食堂車など銀河鉄道の実現性について、原作を読んでスライドに反映し、紹介していた。とてもおもしろかった。
関連記事
- 第36鉄 夏だ! アニメがいっぱい西武鉄道沿線散歩
『銀河鉄道999』『機動戦士ガンダム』『ゲゲゲの鬼太郎』『めぞん一刻』『ハートキャッチプリキュア!』――今回は西武鉄道に乗って、名作アニメにまつわる場所をめぐる旅。夏らしく、かき氷とアメリカンなハンバーガーも食べてきました。 - ガンダムからあの花まで――西武鉄道&アニメの地域活性化戦略
日本動画協会と協力して「アニメのふるさとプロジェクト」を2007年にスタートし、数々のアニメとのコラボを展開している西武鉄道。『機動戦士ガンダム』『銀河鉄道999』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などと行った取り組みを、ヒューマンメディアの小野打恵社長と西武鉄道の野田政成氏が解説した。 - 「秋葉原に負けない聖地に」――JR高架下に「阿佐ヶ谷アニメストリート」が生まれるワケ
2014年3月29日にオープンする「阿佐ヶ谷アニメストリート」。なぜ阿佐ヶ谷にアニメをテーマにした商店街を作るのだろうか。2人のキーパーソンに聞いた。 - アニメ海外進出のカギは何? 大切なのは産業と文化の並立
アニメの市場規模を増やすための議論を行ったアニメビジネス・パートナーズフォーラムのテーマ・ワーキング。そこで筆者が感じたのは「中国から東南アジアへのシフト」「オールジャパン体制」の2つであるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.