なぜトヨタは「女性役員の個人的な違法行為」で謝罪会見を行ったのか:スピン経済の歩き方(2/4 ページ)
オキシコドンの密輸容疑で逮捕され、トヨタ自動車を辞任した前常務役員のジュリー・ハンプ氏。彼女が逮捕されるとすぐに、豊田章男社長は謝罪会見を開いた(のちに不起訴)。一部メディアは好意的に受け止めていたが、企業の危機管理を担当しているプロからは評判が悪い。その理由は……。
豊田章男社長が強く望んだ
じゃあ、どうすればよかったか。一般論としては、逮捕段階では世間を騒がしたことへの謝罪と捜査の行方を見守るというステートメントをWebサイトなどにあげる。そして、容疑がかたまって起訴をされた段階で、はじめて謝罪会見を行えばいい。不起訴ならば会見を開かなくて済むというわけだ。
このようなプロからの指摘は、非常にうなずける。というよりも、自分としてもさまざまな企業広報から「もし役員が逮捕されたらどうしましょう」なんて相談を受けることがあるが、そこではだいたい似たような回答をしている。
そこでひとつの疑問が浮かぶ。なぜ一般的には「アウト」な危機管理対応をしたのか。トヨタほどの世界的大企業ならば、社内外に危機管理の専門家がいるはずだ。その進言が届かないというのなら答えはひとつしかない。
豊田章男社長が強く望んだのである。
もちろん、トヨタ内部で何があったのかなどまったく知らないので、あくまで想像に過ぎないのだが、豊田社長の「頭の下げ方」を見れば、そう思えるふしが多々ある。
会見で社長は右手でマイクをぎゅっと握りしめて深く頭を垂れたが、これはプロが唱える「謝罪の作法」としてはあまりよろしくない。正式の謝罪はマイクは机などに置き、両腕はピンとのばして45度くらいの角度でおじきをする。不祥事企業の経営陣が横にズラリと並んできれいに頭を垂れているが、あれは先ほどのような危機管理のプロたちがそのように教えているのだ。
もちろん、そのようにレクチャーを受けたが、本番であがってしまって忘れたということもある。いずれにせよあの姿を見て強く感じたのは、「とにかく自分の口で今回のことを謝りたいんだなあ」ということだ。
関連記事
- 「日本は世界で人気」なのに、外国人観光客数ランキングが「26位」の理由
日本政府観光局によると、2014年に日本を訪れた外国人観光客は2年連続で過去最高を更新した。テレビを見ると「日本はスゴい」などと報じているが、国別ランキングをみると、日本は「26位」。なぜ外国人たちは日本に訪れないのか。その理由は……。 - 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という照明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - なぜ“バターみたいなマーガリン”が増えているのか
夏の猛暑が原因で、昨年スーパーの棚からバターが消えた。ここにきてようやく商品が並ぶようになったが、最近は“バター風マーガリン”が売れているという。少し前まではマーガリンがバターをうたう商品は少なかったのに、なぜ急に増えてきたのか。 - なぜ小さな会社が、“かつてないトースター”をつくることができたのか
バルミューダがこれまでになかったトースターを開発した。最大の特徴は、表面はさっくり焼けて香ばしく、内部は水分をしっかりと閉じ込めてふわふわ。そんな食感を楽しむことができるトースターを、なぜ従業員50人の会社がつくれたのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.