大井川鐵道で「ジェームス」の活躍が少ない理由:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/4 ページ)
大井川鐵道の「きかんしゃトーマス」運行が2年目を迎えた。今年は新たに赤い機関車「ジェームス」もやってきて、トーマスの仲間たちは5台になった。しかしこの新参者の運行日は少ない。原作の世界観を大切にすれば、その答えは自明だった。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
2014年の鉄道重大ニュースといえば「大井川鐵道のきかんしゃトーマス」運行だ。大井川鐵道は2013年11月にプレスリリースを発行し、年明けから自社サイトで予約を募った。情報はネット媒体を駆け巡り、あっという間にすべての日程で満席となった。一方、テレビニュースは実物の映像がないとニュースにならない。6月の報道公開の走行映像はニュースで紹介されていたけれど、その時点で予約が締め切られていた。トーマスが走る場面をニュースで知った人は予約できなかった。そのくらいトーマスは人気で、情報に敏感な人しか予約できなかった。
そして今年も大井川鐵道にトーマスがやってきた。6月7日から運行開始。7月11日からは赤い機関車「ジェームス」も走り始めた。大井川鐵道は予約方法を見直し、乗車日の125日前の14時から翌日の13時までに受け付けて、抽選方式とした。また、予約が整理されて空席が出た場合は、運転日の10日前の14時から9日前の13時まで再受付を行い、希望多数の場合は抽選とした。予約抽選やキャンセル待ち受付が整備されたから、乗ってみたい人にとってはまだチャンスがありそうだ。
7月9日、大井川鐵道はジェームスの報道公開を兼ねて、招待者を招いた試乗会が開催された。千頭駅には「パーシー」、「ヒロ」、トーマス、ジェームスの4台が並んだ。実はもう1台の“隠れキャラ”がいる。鉱山鉄道の保線用機関車「ラスティ」だ。彼は昨年のトーマスフェアでひょっこりと顔を出していた。今年は5月下旬まで千頭駅にいたけれど、現在は井川線の川根両国駅にいるそうだ。
この日はトーマスとジェームスが同じ列車に連結されて、7両の客車を引っ張った。新金谷駅発千頭行きは先頭にトーマス、次位にジェームスの重連、帰りの千頭発新金谷行きは、ジェームスが先頭で、トーマスは最後尾に付いた。2台の機関車で客車を挟むスタイルだ。このように、トーマスとジェームスが協力して運転する場面は、今シーズンはこの日だけ。そのため沿線には雨天にもかかわらずカメラマンもたくさんいた。
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