「共存文化」のダイハツがとるべき世界戦略とは:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
スモールカーに特化するダイハツは国内外でスズキとしのぎを削る。そうした中でダイハツの強みと言えるのが「共存文化」である。そこに根ざした同社の世界戦略とは……。
トヨタグループ
最後にトヨタとの関係を整理してみたい。ダイハツにとってトヨタは諸刃の剣だ。協業の歴史も古く、トヨタグループに加わっているメリットは計り知れない。しかし、トヨタはトヨタでGM、フォルクスワーゲンと販売台数世界一の座をかけた争いを繰り広げている。販売台数はグループトータルでカウントされているので、ダイハツの販売台数はトヨタに加算される。トヨタにとってダイハツのグローバル戦略の成否はトヨタの世界一がかかった重要な分岐点となる。
特に台数ベースの話ではコンパクトカーが重要なのは言うまでもない。ダイハツの戦略の一挙手一投足はトヨタが注意深く見守っているはずだ。もししくじれば戦略にトヨタが容喙(ようかい)してきてもおかしくない状況は整っている。
ダイハツは何としてもアジアで勝って、経営の独自性を保っていきたいと考えているだろう。一方で投資家にとっては損の少ない状況でもあるだろう。ダイハツが成功すれば良し、万が一失敗したらトヨタの支配が強まることで財務が補強される可能性が高い。
筆者のようなクルマ好きは、ダイハツが独自性を守り抜くことを切に望んでいる。あまり知られていないが、ダイハツは現存する最古に国産自動車メーカーなのだ。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。
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