スズキが“世界自動車戦争”の鍵を握る理由:池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/6 ページ)
他社に先駆けてインド市場に進出したスズキは、今や世界中の自動車メーカーから羨望の眼差しを浴びている。同社の成功の裏側にあったものとは……?
これまで何度か書いてきたが、スズキというメーカーの価値を最も高めているのは性能と低価格を両立しつつ軽自動車を作る技術だ。安く作れることは軽自動車メーカーとして重要なことだが、この10年、スズキはそれに加えて価格上昇を招かずに性能を高める方法を手中にした。
そのきっかけを尋ねると、スズキのエンジニアは独オペルとの共同開発を挙げる。オペルの実態は欧州GMだ。スズキはかつてGMと提携関係にあり、2000年代に旧東欧圏に販売する商品としてスズキの「スプラッシュ」を「オペル・アギーラ」としてOEM(相手先ブランド生産)することになった。
スズキのエンジニアによれば、アギーラの共同開発作業で、さまざまなカルチャーショックを味わったという。それは主に車両開発テストにおける操縦安定性の目標設定にあった。これまでスズキ社内でよしとされてきたラインにオペル側から多くのダメ出しがあったらしい。
オペルはGMグループだが、拠点はドイツにある。ドイツの設計思想は基本的に大鑑巨砲主義的なところがあり、多くの場面で問題点を解決するためにメカニズムを複雑にする。
マルチリンク式サスペンションの生まれた国だということも頷ける。前後、左右の位置決めが必要なら2方向の動きにそれぞれ呼応するアームでそれをコントロールする。場合によっては追加された機構がネガを生み出すので、その対策としてさらに新機構を組み込む。そういうエンジニアリングを見ていると、理知的ではあるが、どこか「バベルの塔」を連想させることがあるのだ。
想像だが、オペルは問題解決のために、メカニズムの複雑化を求めたのだろうと思う。ところが、スズキには揺らがない「どケチマインド」がある。問題点を把握しても、その解決のために複雑な機構を採用してコストが上昇することをスズキはどうしても是とできなかった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
スズキが新工場を作る意味――インド自動車戦争が始まる
1月末、インド・グジャラート州で新工場の定礎式を行ったスズキ。実は同社は1980年以来、35年もの長きにわたりインド市場に取り組んできた。そのスズキがこのタイミングで新工場を設立する意味とは……?
新型マツダ・デミオが売れた3つの理由
マツダの新型デミオ、特に「SKYACTIVE-D」搭載のディーゼルモデルが売れている。「売れているのはハイブリッド車ばかり」な日本でなぜ新型デミオは売れるのか? その理由とは……。
ITだけではない、インドは隠れた宇宙大国か?
「IT大国」で知られるインドだが、実は数十年前から宇宙開発に力を入れている。昨今は宇宙ベンチャー企業の台頭も目立つようになってきた。
値段は競合の2倍――それでもカシオの電卓がインドで売れる、2つの理由
1980年代からインドで電卓を販売していたが、値段が高いため知名度の割に売れていなかったカシオ。しかし2010年発売の新商品が大ヒット、以来インドでの売れ行きはずっと好調だという。高くても売れる、その秘密とは?- 池田直渡「週刊モータージャーナル」バックナンバー
