人口3000万人の小さな国に、吉野家が「再上陸」したワケ:東南アジア発、気になるニッポン企業(3/4 ページ)
牛丼チェーンを展開している吉野家ホールディングスがマレーシアに再上陸した。同社は2009年にマレーシアから撤退したのに、なぜこのタイミングで再スタートしたのか。その理由は……。
ハラル認証なしのまま、店舗を展開
「マレーシア政府のハラル認証(JAKIM)は、マレーシア政府の機関が発行し、国策として取り組んでいることもあり、イスラム圏ではもっとも厳格だと言われています。JAKIMなら、各国の消費者にも安心して使っていただけると判断しました。われわれが目指すのはハラルの“ゲートウエイ”。そこで、マレーシアを選んだのです」と前田さんは説明する。
実際に、日本やインドネシアで取得したハラルがマレーシアでは認めてもらえなかったケースがあったという。
「JAKIMハラルの認証は、取得しても終わりではありません。取得後も、承認機関の立ち入り検査があり、常に基準に沿った運営が義務付けられています。守っていないと認証を剥奪されるケースもあります」という。
JAKIMハラルの認証を得るには、マレーシアの決められた場所に工場がなければならない。厳格にイスラム法に基づいたモノであっても、ハラルでないモノと触れた瞬間にハラルでなくなってしまう。例えば、ハラルの食品を、ハラルでない容器や食器に入れたとたん、ハラルでなくなってしまうのだ。そのために容器はもちろん、輸送、保管方法などについても細心の注意を払い続けないといけない。
「コストのみならず、手間もかかります。しかしこれを乗り越えなければ、本当の意味でのイスラム市場への進出とは言えません。今回の進出は、将来の成長に向けた大きな意思決定だと考えています」(前田さん)
今回オープンした吉野家・はなまるうどんでは、まだハラル認証は取得していない。牛丼では豚肉やアルコール成分を含むみりんは使っていないが、うどんでは一部スープのだしにみりんが入っている。こういった調味料の置き換えを年内を目標に進め、まずはすべての食材をハラル認証に対応できるように変更するのが当面の目標だ。ムスリムのなかにはハラル認証がなくても気にしない人々もいる。しばらくはハラル認証なしのまま、店舗を展開していく。
関連記事
- 丸亀製麺のうどんが、インドネシアでウケた理由
日本全国で讃岐うどんが広がったのは2002年ごろと言われているが、海外でもファンが増えつつあるという。トリドールが運営する「丸亀製麺」は海外進出に積極的で、数年前にオープンしたインドネシアとタイの売り上げが好調だ。その理由は……。 - 日本人のここがズレている! このままでは「観光立国」になれません
「訪日客が1300万人を突破」といったニュースを目にすると、「日本は観光立国になったなあ」と思われる人もいるだろうが、本当にそうなのか。文化財を修繕する小西美術工藝社のアトキンソン社長は「日本は『観光後進国』だ」と指摘する。その意味とは……。 - 日本に逆輸入! KDDIの“まるごとオフィス”とは
「KDDIまとめてオフィス」という会社をご存じだろうか。海外で展開して、現地で好評だったことから、最近日本に逆輸入されたのだ。事業内容を詳しく説明すると……。 - クロネコヤマトがマレーシアで快進撃の理由
クロネコヤマトでおなじみのヤマトグループがアジア地域に宅急便を広げている。マレーシアヤマトは2011年に、宅急便を本格稼働し、その後急速に事業を拡大させている。その理由は……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.