異国の地で奮闘するJAL社員の空港業務を見てきた:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)
海外の空港での仕事は、成田、羽田など国内の大規模空港とはまた違った苦労や醍醐味がある。マレーシアのクアラルンプール国際空港で活躍するJALの緒方奈美さんに話を聞いた。
悪天候で遅れが出ると職場は戦場に
飛行機の遅れで最も多いのが、悪天候だ。熱帯雨林気候のマレーシアでは、1年を通して激しいスコールがある。2500ミリを超える年間平均降水量は、3位のバングラデシュ、2位のインドネシアを抑えて世界一。特に10月から2月ごろまでの雨期には、空港周辺は夕方から真っ黒な雨雲におおわれ、強烈な風雨とともに落雷が地域を襲う。
「723便にはクアラルンプールが最終目的地でないお客さまも少なくありません。ペナン行きの便に乗り継げない人が出れば、提携するマレーシア航空に連絡して次の便に空きがあるかを確認し、OKであれば『何名お願いします』とブッキングを入れて手配します。同時に、荷物をきちんとその便に積み替えるよう、担当スタッフに指示する必要があります」(緒方さん)
クアラルンプールからペナンへ乗り継ぐ乗客の荷物には、最終目的地までの“スルータグ”が付いてしまっている。それを、変更した便のタグに貼り替えなければならない。限られた時間の中で、そうした作業を確実に進めていくわけだ。到着便の遅れの連絡がきた時点から、常に先を読んで手配に動かないと、便の振り替えができない乗客が出てきてしまう。
「一番心配なのは、ランカウイへ乗り継ぐお客さまがいるかどうかですね。ペナンならば1時間に1本くらいマレーシア航空の便があるので、その次の便に乗ってもらえばいい。ですがランカウイ行きだと、JALで着いて乗り継ぐ便が最終になってしまう。その便に乗れないと、クアラルンプールで1泊してもらわなければなりません」(緒方さん)
その場合はホテルも手配し、翌日のランカウイ行きの早めの便を予約する。リゾートアイランドのランカウイは、モルジブなどと並んでハネムーナーの乗客が多い。1日遅れることで、現地で予約しているホテルの1泊分にキャンセルチャージが発生する。「航空会社としては、そこまで保証するのは難しい」と緒方さんは言う。
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