異国の地で奮闘するJAL社員の空港業務を見てきた:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
海外の空港での仕事は、成田、羽田など国内の大規模空港とはまた違った苦労や醍醐味がある。マレーシアのクアラルンプール国際空港で活躍するJALの緒方奈美さんに話を聞いた。
職場全体を動かすリーダー役も
例えば、日本に台風が接近し、723便の成田からの出発が大幅に遅れると、旅行者の乗り継ぎ便の変更手配などでクアラルンプールのスタッフたちはてんやわんやに。ローテーションを組んで担当している3人うち、1人は折り返しの724便のチェックイン業務にかかり切りにならなければならない。残る2人で、到着の遅延に対応する必要がある。
「私は○○便への乗り継ぎ客の対応をするから、あなたは△△便のほうをお願い、というように手分けして当たります。ですが、それではとても追いつかない状況が過去に何度かありました。成田なら、いつでも若い社員にヘルプを頼めますが、こっちだとそうはいきません。そんなときどうするか。マネージャーでも空港所長でも駆り出して、とにかくやり遂げるしかないんです。『所長はこの便のこのお客さまをお願いしますね』と仕事を割り振って。先輩と後輩、上司と部下の関係がなくなる瞬間です(笑)」(緒方さん)
気が付くと、職場全体を動かすリーダー役を務めている自分を発見することも多いそうだ。そういう経験は日本に帰っていずれ実際に「リーダー」の肩書きをもらったときに、きっと役立つだろう。人は、ただ命令だけしても動かない。チームワークと思いやりを大切にし、この人のためなら力になりたいと思われる人間であることが必要だ。「今の職場は、人と人とが深いところでつながっていると思います。皆まるで本当の家族のように」と緒方さんは言って、白い歯を見せた。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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