青春18きっぷ、特例を廃止して値下げしないか:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
この夏も青春18きっぷの利用期間が始まった。老若男女、誰もがJRの普通列車に乗り放題。JRにとっては閑散期の増収源、利用者にとっては旅のチャンス。長い目で見れば鉄道旅行層の拡大にも貢献する。しかし、ルールがフクザツになりすぎている。
商品力を高めるために特例を追加
青春18きっぷの歴史は30年を超える。国鉄からJRに変わり、路線網も変化した。そして、青春18きっぷは商品の魅力維持のため、さまざまな特例を設けて対応してきた。
例えば、「特急しか走らない区間だけは特急列車自由席に乗車可能」という点だ。JR北海道の石勝線は根室本線のバイパスルートとして、特急列車のために作られた。普通列車限定の青春18きっぷはこのルートに乗れない。それでは不便だとして、この区間だけは特急列車の自由席に乗れる特例を作った。ただし、この区間を越えると特急列車には乗れない。特急専用区間の境目で降りて、普通列車に乗り継ぐ必要がある。この特例は青函トンネルの津軽海峡線、木古内駅〜蟹田駅間も適用される。
また、JR東日本の奥羽本線、青森駅〜新青森駅間は普通列車があるものの、運行本数が少ない上に約半分が特急列車という理由で、こちらも特急列車自由席に乗れると記載された。JR九州の宮崎空港線も特急列車自由席に乗車可能だが、路線自体が特急列車に普通乗車券で乗れる特例があるため、ご案内には記載されない。
さらにご案内の追加が続く。制限としては「災害不通などの払い戻し不可に加えて、列車の接続ができない場合も新幹線や特急への乗車は不可」「自動改札機の使用不可」、「夜行快速ムーンライトながらは全車指定席」という注意書きの後、「夜行快速などで乗車中に0時を過ぎる場合、0時を過ぎてから最初の駅までの乗車券が必要」「併用して使用する乗車券は、乗らない区間の営業キロが100キロを超えない場合は払い戻し不可」である。だんだんややこしくなってくる。
一方、追加された利点としては「普通列車のグリーン車と指定席は、別途グリーン券と指定席券を購入すれば利用可能」「ホームライナーなどはライナー券を購入すれば利用可能」となった。そして券面にも、ご案内にも書かれていないけれど、記事として青春18きっぷの説明をするときは、「18は青春の象徴という意味で、実際には年齢の制限はない」と付け加えなくてはいけない。今でも若者専用、学生専用と思っている人もいるらしいからだ。
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