米メディアが見た白鵬は「孤独なヨコズナ」:赤坂8丁目発 スポーツ246(1/4 ページ)
横綱・白鵬の言動が波紋を呼んでいる。関脇逸ノ城戦で勝負がついた後に相手のあごを押した白鵬に対し、日本相撲協会の審判部が問題視。メディアは批判的な論調を向けているが、筆者の臼北氏は違和感を覚える部分もあるという。それは……。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
ここのところ横綱白鵬へのバッシングが凄(すさ)まじい。まず大きな話題となったのは大相撲名古屋場所の9日目(7月20日=愛知県体育館)での出来事だ。関脇逸ノ城戦で勝負がついた後に相手のあごを押した白鵬に対し、日本相撲協会の審判部が問題視。師匠の宮城野親方を通じて、厳重注意を受けた白鵬は「(感情を)抑えるところは抑えて。勝負の世界ですから、意識してやっていきたい」と謝罪の言葉を口にした。
これにメディアは一貫して批判的な論調を向け、多くのファンからもブーイングが上がっている。それは、そうだ。横綱は相撲界の頂点に立つ人間であり、下の力士たちからも一挙一動が模範とされなければならない立場。いわゆる「ダメ押し」は明らかな愚行であり、これを過去にも何度か繰り返している白鵬は猛省しなければならない。
しかし、この騒動には違和感を覚えるところも正直ある。白鵬と審判部の親方衆を含めた日本相撲協会上層部との間にある微妙な距離感だ。実際、「ダメ押し」した白鵬については審判部内で「直接呼び出して、われわれが注意すべきではないか」との意見も出たものの、最終的に「そんなことをしたら大事になる」との見解で一本化されて見送られた経緯がある。
これには「審判部が横綱を気遣った」という見方も出ているが、そうではないだろう。それよりも白鵬とのコミュニケーションを密にしようとしていない審判部の逃げの姿勢とメンツばかりを気にする保身ぶりこそが、今回の呼び出し回避につながったと見ていい。
もし直接呼び出して審判部の親方衆たちが口頭注意していれば、白鵬の心にも何か響くものがあったかもしれない。だが、師匠を通じた間接的な注意だけではシラケた雰囲気になるのはどうしても否めず、反省するどころか逆に白鵬が日本相撲協会上層部に対する距離感や不信感を覚えたとしても全く不思議ではないと思う。どうせ、いつも直接言えないからメディアを使って自分の批判を繰り返しているだけなんじゃないのか――。そういうふうに横綱が疑念を抱き始めているとしたら、事態はかなり深刻だ。
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