矢野経済研究所は7月27日、「食品宅配サービス市場」に関する調査結果を発表した。それによると、2014年度の食品宅配市場(主要10分野合計値)は前年度比102.9%の1兆9348億円。少子高齢化の影響を受け、国内の食関連市場が縮小傾向にあるなかで、食品宅配市場は堅調に推移している。この背景には「共働き世帯の増加やライフスタイルの多様化に加え、高齢者人口の増加に伴い、高齢者の見守りサービスを兼ねた食事や食品の宅配需要が確実に増加していることが挙げられる」(矢野経済研究所)
また食料品の購入や飲食に不便を感じるといった高齢者を中心とする“買物弱者”の増加や女性の社会進出といった社会的需要もあり、食品宅配サービスは年々、その重要性を増しているという。
食品宅配市場の課題
食品宅配市場は堅調に推移しているが、どういった課題があるのだろうか。矢野経済研究所は「事業者の積極的な参入による業種業態を超える競争の激化や、宅配事業者の値上げなどによる配送コストの上昇と配送員不足が挙げられる」と指摘。
また、あらゆるチャンネルで消費者と接点をもつオムニチャンネル化への対応が求められているほか、宅配以外に店舗での受け取りや店頭での買い物を自宅配送にするなど、都市部を中心に多様な受け取りサービスを希望する消費者が増えている。「百貨店、食品スーパー、コンビニなどの小売業は、ネット通販にも進出してきており、またネット通販専業事業者が実店舗をもつ事業者との連携を図るといった動きもある。食品宅配においてオムニチャネル化が活発化している」(同研究所)と分析した。
こうした動向を受け、同研究所は2015年度の市場規模は前年度比102.7%の1兆9864億円、2019年度には2兆1470億円に拡大すると予測している。
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