3大キャリアが語るIMT-2000への取り組み──主流になるのは4年後NTTドコモによる5月末のIMT-2000サービス開始を控え,日本でサービスを行うキャリア3社が一堂に会した。IMT-2000に対する各社の思惑は錯綜しているようだ。
千葉・幕張メッセで4月11日から「SiscoWave+Networkers」が開催されている。初日の特別講演には,NTTドコモ,J-フォン,KDDIといった次世代携帯電話のキャリアが集まり,「次世代サービス各社の戦略と利用イメージ」と題してパネルディスカッションが行われた。
次世代携帯電話普及は4年後日本でIMT-2000サービスを行うキャリアは3社。しかし,IMT-2000に向かう姿勢はそれぞれかなり違う。 「携帯の基本はエリアだ。エリアが狭ければ誰も使ってくれない」とKDDI取締役,移動体技術部の伊藤泰彦副本部長は語る。しかし,次世代携帯電話(IMT-2000)のサービス開始当初は,各社ともに首都圏などの限られたエリアでのサービスとなる。 次世代携帯電話が主流になるのはいつくらいなのだろうか? NTTドコモ,モバイルマルチメディア本部長の小野伸治常務は「4年間は我慢だ」と,4年後には損益分岐点に達しているという意味も含めて答える。 それに対してJ-フォンの答えは慎重だ。「狭いエリアの中で使い込んで,基地局などの密度を検証する期間が,少なくとも1年はかかる」と,J-フォン東日本の技術本部長の桑折恭一郎専務は語る。次世代携帯電話が本格化する時期が見えてくるのは,実際にサービスを開始してからだという。 KDDIは,一気にIMT-2000に進むのではなく,cdma2000 1xという名称で現行のcdmaOneを拡張する。既存の設備の改良で最大144Kbpsの通信速度を確保しながら,2002年の9月にデータ専用の通信方式1x EV-DO(HDR)を使い平均600Kbpsのサービスを提供する予定だ。「まずは144Kbpsでかまわないから,安く広く展開する」(伊藤氏) 一気に高速なデータ通信に移行する2社に対して,KDDIは徐々に通信速度を高速化する。1x EV-DO(HDR)も,メインは2GHzだが800MHz帯でも提供するという。「ハイスペックなユーザーに関してはHDRで取り込む」(伊藤氏) IMT-2000のターゲットはどこなのか?IMT-2000で想定しているユーザー層も,各社で大きく異なる。一致するのは,「端末は最初はどうしても高くなってしまう」(NTTドコモ・小野氏)ということくらいだ。 サービス開始を間近に控えたNTTドコモでも,ユーザー層は絞り込めていないようだ。小野氏は,「少しくらい高くてもファッション性で欲しい,というユーザーがいる。しかし,イントラネットなどのビジネスユースが多いのではないか」と,まだはっきりとしたターゲット層は定まっていないことを明かす。 J-フォンでは,「3Gになっても,端末が高く,重くなっては仕方ない」(桑折氏)と言う。「当初は大掛かりに販売することは考えていない」と,桑折氏は端末に関しても慎重な姿勢を崩さない。 逆に,IMT-2000のターゲットについては「エンターテイメント。ビジネスというより若い人の楽しみ」と桑折氏は断言する。電話機単体で使うサービスに関しては,ビジネスシーンで高速なデータ通信はいらないという考えだ。さらにPCやPDAと接続して使う場合は,高速データ通信が必要なのは都市部だけであると想定している。 KDDIでは,多少事情が異なる。「1xは広いユーザーに。HDRではまずはビジネス,続いて娯楽を狙う」(伊藤氏) 未だに料金体系は不透明IMT-2000が普及するかどうかは,“エリアと料金にかかっている”と見る向きが多い。しかし,こと料金に関しては未だに不透明だ。 NTTドコモの小野氏は「今のパケット料金をかなり思い切って下げていきたい」と言うものの,「ビット単価あたりでPHSより安くはできない」とも。現在のiモードのパケット料金は,128バイト当たり0.3円。同様に計算するとPHSは128バイト当たり0.004円と,約75分の1となる(M-stageの料金で計算)。 J-フォンは「ビット単価を下げる方向で検討中」(桑折氏)とさらに慎重だ。 唯一KDDIは,cdma2000 1xでは既存設備の流用が可能であり,さらに1x EV-DOの導入に当たっては「データと音声は分離するべき」(伊藤氏)と,データ通信に関しては送信出力の調整も行わない完全なベストエフォート型となる。具体的な料金については言明しないが,さまざまな可能性を含んでいる(4月2日の記事参照)。 IMT-2000はPHSに似ている?各社の意見で一致していたのは,“当初のIMT-2000はPHSと似ている”ということだ。PHSも音声がクリアでデータ通信速度が速かった。技術的に優れたPHSが主流になれなかったのは,やはりサービスエリアの狭さにある。当初の“自宅でつながらない”“すぐに切れる”というイメージを払拭し切れなかった結果だ。 「いずれはIMT-2000が主流になることは間違いないが……」と誰もが語る。しかし立ち上がりに失敗すると,しばらくはPHSと同様の状況にもなりかねない。イチからサービスエリアを拡大していくだけに,過度にユーザーの期待を集めると,逆に悪いイメージがつく可能性もある。 IMT-2000ならではのメリットである国際ローミングも,欧米のIMT-2000導入の遅れに伴って実現時期は遅くなりそうだ。 この当たりの思惑が,多少無理をしてでも世界で初めてIMT-2000サービスを開始するNTTドコモ,それに対して当初の予定を6カ月遅らせるなど慎重なJ-フォン,段階的な進化を続けるKDDIと,各社のIMT-2000への姿勢の違いに表れている。 関連記事 [斎藤健二,ITmedia] Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved. モバイルショップ
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