Mobile:NEWS 2002年8月5日 05:04 PM 更新

アルミボディの中に隠された秘密〜ドコモ「Musea」を語る

ドコモが「GFORT」に続いて2機種目となるカシオ製Pocket PC「Musea」をリリースする。流行のXScale搭載機ではないものの、リリースでは明らかにされていないさまざまな機能が盛り込まれている

 ドコモが9月6日にリリース予定のPocket PC「Musea」(7月29日の記事参照)。流行のXScale搭載機ではなく、スロットもType II CFカードスロットのみと、カタログ上のスペックだけを見ると物足りなさが感じられる。

 ところが、目に見えないところでさまざまな工夫が凝らされていることが、ドコモの話から明らかになった。

特別なサーバやクライアントソフトなしにWake On Ringが可能に

 Pocket PCが携帯電話のように普及しない理由の1つは、情報がプッシュされないことだ。着信したメールを見るには、自分でサーバにアクセスしなくてはならず、携帯メールのようにリアルタイムで連絡が取りにくい。

 それを解消するためのシステムが「Wake On Ring」とよばれるものだ。“情報が変更される”といったイベントがサーバ側に発生すると、サーバがクライアント(この場合はPocket PC)を起動させ、PHSを通じてメールやスケジュールなどサーバ側で変更された情報をクライアントに流し込む仕組みだ。Pocket PCの電源がオフになっていても、差し込まれたPHSが待ち受け状態になっていれば、Pocket PC側からアクセスすることなく新しい情報を受け取れる。

 NEC製のPocket PC「Pocket Gear」にもWake On Ringに対応するハードウェア回路とミドルウェアが内蔵されていた(2001年12月の記事参照)。しかし通常のWebサーバやメールサーバは、データを流し込む仕組みを備えておらず、プッシュ用のサーバが別に必要となるため(2001年11月16日の記事参照)、NECでは主にエンタープライズ向けのオプションサービスと位置付けていた。


NTTドコモMMターミナル開発部、C to C端末開発第2担当課長の入鹿山剛堂氏

 ドコモはWindows CE搭載端末「Sigmarion II」から、Wake On Ring対応のドライバとミドルウェアを搭載、プッシュ機能を実現させている。端末に直接データを流し込むのではなく、端末を起こすためのトリガーとして同社のPHS用メッセージングサービスキャラトークを使い、Pocket PCが起動後にコールバックして情報を取りに行かせるという仕組みで、特別なサーバを必要としないのが特徴だ。MuseaもWake On Ring対応の回路とミドルウェアを内蔵しているため、同様の機能をPocket PCで実現できる。Pocket PC側は、キャラトークでどのメッセージが来たときにどのアプリを起動させるかを設定し、データ通信カードを待ち受け状態にしておけばいい。

 トリガーとなるメッセージはATコマンドで送信する。「音声対応のPHSを使えば音声でクライアントを起動させることもできる」(NTTドコモMMターミナル開発部、C to C端末開発第2担当課長の入鹿山剛堂氏)。Wake On Ringに対応するソフトは、Webブラウザとメーラー、Web録画ソフト「Auto Web Recorder」の3つだ。

アルミボディの理由

 Museaは、ヘビーデューティでどちらかといえば無骨なデザインの「GFORT」とは対照的な、アルミ素材を使った繊細なデザインで登場した。GFORTはエンタープライズ向けに開発されたため、さまざまなモバイル環境で利用できるよう頑丈な作りになっていたが、Museaはコンシューマーにも受け入れられるようデザインにこだわったと入鹿山氏は言う。

 「多くのPocket PCはプラスチック素材に塗装を施して金属のように見せているが、(Museaは)薄くて軽く、強度がある本物のアルミを使うことで、高級感を出したかった」(同氏)。スタイラスにもアルミ素材を使い、クレードルは深い青の透明なオブジェ状であるなど、細かい部分にもこだわりが見られる。

 また、同社のWindows CEデバイス「sigmarion II」がゼロハリバートンデザインの採用によって、ユーザー層が広がったことから、薄くて軽く、高級感が感じられるアルミ素材が選ばれたという面もあるようだ。


ボディやスタイラスにアルミ素材を採用。カードスロットはCFのみで、薄さ14.8ミリ、重さ約180グラムと、シャツのポケットに入れてもそれほどかさばらないサイズ。ちなみに2スロット搭載の東芝製「GENIO e550G」は薄さ15.9ミリ、重さ約170グラム

 しかし、アルミを採用したのはデザイン上の理由だけではないと入鹿山氏。「今後、DoPa(用語参照)や、FOMA(用語参照)のCFタイプ端末が登場した場合のことも考えてアルミを採用している」。将来、CF型のPDCやFOMAカードが出てくると、PDAのCPUやバスラインから発生するノイズと干渉し合って電波が埋もれて使えない状況が出てくる可能性があるという。そこで、より干渉を受けにくいアルミ素材を使い、中のシールドもノイズを吸収するよう設計されている。「PDCやFOMAは電力消費が多いため、CFカードに供給できる電流も、通常のPocket PCの倍ぐらい余裕を持たせている」(同氏)。


スピーカーは背面に、マイクは正面左下に搭載。「P-inカードを使った電話機能が実現した場合にも、電話機のようなスタイルで使えるような配置にした」(入鹿山氏)


内蔵されるソフト一覧。FOMAやPHSとの接続につまずかないよう設定を補助するツールが用意される


クレードルは半透明のポリカーボネート製。スタイラスもアルミ製

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[後藤祥子, ITmedia]

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