Mobile:NEWS 2002年10月24日 10:39 PM 更新

Intelの携帯向け統合チップ“Manitoba”が狙うもの(2/2)


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ZDNet:日本市場の3Gを見た場合、3GではツインCPU構成が当然と見ているメーカーが大半です。日本市場に向けては、ツインCPU構成と統合チップとどちらを推していくのですか。またどちらが主流になると見ているのですか。

Sica:まずは「PXA261」と「PXA262」(10月15日の記事参照)をManitobaが置き換えることになります。そして、いずれ(GSM/GPRSから)W-CDMAのソリューションに変化していくと思います。そのときは統合型チップ──Manitobaとは呼びたくないが、コンセプトはインターネット・オン・チップという同じものです。

ZDNet:ManitobaはGSM/GPRSからのスタートですが、なぜW-CDMAからのスタートではないのでしょう?

Sica:3Gへの移行は日本でさえ緩やかに起きている状況で、その他の世界では3G市場自体が存在しません。事業のゼネラルマネージャとしては、現在市場の無線方式の80%に相当するGSMに対応する製品を開発していくのが当然かと思います。

 日本において、IntelはPDCのベースバンドチップのナンバーワンプレーヤーですが(7月19日の記事参照)、まだW-CDMAには対応できていないのが問題です。ただし、利益を生み出せるところにリソースを投入するという意味で、GSM/GPRSを選んだということです。

ZDNet:日本で3Gが立ち上がるのはいつくらいというお考えですか。

Sica:3Gはまず日本で最初に大きく伸びていくのではないかと思っています。ただし普及に当たっては、利用モデルがうまく作られていかなくてはいけません。今iモードでできないことで、何が3Gでできるようになるのか? 十分にユーザーを説得できる材料を提供していく必要があります。また課金モデルもうまく作っていく必要があると思います。

ZDNet:通信キャリアに、なぜ3Gが立ち上がらないのか聞くと、1つには「端末の電池寿命が短い」つまり、半導体のせいだ、という理由が挙がってきます(2月8日の記事参照)。

Sica:確かに、最初に出てきた端末では電池寿命が問題でした。ただしシリコンだけの問題ではないと思います。3Gのベースバンド自体が電力を食うという問題はありますが、それ以外にもスクリーンの解像度を上げたり発色数を増やしたりしていますので、そういったところでも電力が食われていると思います。

 半導体メーカーだけでなく液晶メーカーなどが共通で持っている課題が、消費電力を下げることです。Manitobaのメリットの1つとしては、半導体の部分で大幅に消費電力を下げられることです。また、端末にストリーミングビデオを配信する場合などに、ワイヤレスMMXというソリューションを使って(9月12日の記事参照)、それがない場合に比べて消費電力を30-40%削減できます。ただし、これは端末全体の消費電力の問題の解決にはならないと思います。

Manitoba、そしてXScaleのアドバンテージは?

ZDNet:Manitobaのベースバンド部分は、MSA(Micro Signal Architecture)を使っています(2000年12月の記事参照)。統合型ではなくてベースバンドチップ単体の計画はどうなっているのでしょうか。

Sica:Manitobaは2つの意味があります。1つはPCAのビルディングブロック(2001年4月の記事参照)を使った統合型のシステム・オン・チップであるということ。もう1つは、初めてMSAを実現できるということです。Manitobaと同時期に、MSAを使ったベースバンドのソリューションとして派生の製品は出てくると思います。

ZDNet:単体のアプリケーションプロセッサとしてのXScaleは、日本市場でのセールスはどうでしょうか。

Sica:世界的には好調です。量産体制では既にPDAや携帯用のStrongARMを凌ぎました。単独の製品としては非常にうまくいっているのではないかと思っています。日本でも、ソニーのCLIE(10月2日の記事参照)やシャープのザウルス(6月24日の記事参照)が(XScaleベースの)PXAプロセッサを採用しました。

 それから来年の前半には、携帯にXScaleのテクノロジーが入っていきます。

ZDNet:日本の端末メーカーの人に聞きますとTI(Texas Instruments)のOMAP(3月18日の記事参照)を評価する方が多いのですが、これに関してコメントをいただけますか。

Sica:そうですか、あまりよくないと思いますが……。TIは携帯市場で既存のプレーヤーではありますが、Intelはより多くを提供できます。ソフトウェア的に共通のプラットフォームを提供できるからです。

 PCAのアプリケーション部は、(TIのOMAPのように)小さなARMのプロセッサとDSPにアプリケーションソフトを分けていく必要はありません。すべてのアプリケーションにPCと同様に1つのプロセッサで対応するものです。ネイティブソフトからMPEG-4のストリーミングまで処理できます。

 もう1つのポイントは、業界標準のOSをサポートしているということです。例えばWindows CEベースのPocketPCやStinger、Palm、Symbian、Linux、これらすべてのものに向けてアプリケーションを作ることができます。これは現在OMAPには対応できていない部分です。性能的にも、オープンであるという意味でも、Intelのほうが優位だと考えています。



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[聞き手、構成:斎藤健二, ITmedia]

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