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2003年2月18日 03:32 PM 更新
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三洋、業界最小の31万画素CCDモジュール「HyperEye」
携帯向けCCDモジュールで大きなシェアを持つ三洋が、VGAサイズの撮影が可能な31万画素CCDモジュールを発表した。8月から量産の予定
三洋電機は2月18日、業界最小・最少低消費電力となる携帯電話向け31万画素CCDモジュール「IGT99268M-ST」、愛称「HyperEye」を発表した。VGAサイズ画像の撮影が可能。
モジュールサイズは12.9×9.9×6.5ミリ、消費電力は秒間5コマ時で95ミリワット。2.9Vの単一電源で動作する。最低被写体照度は2ルクス(感度アップモード)。レンズは低歪2枚レンズを使用した。
左はレンズ系を付けたところ。右は外したところ
VGAサイズの利用用途を考慮し、無段階のデジタルズーム機能を盛り込んだ。また、CCD特有のスミアの補正機能、低照度時ノイズの抑圧フィルタも搭載した。
サンプル出荷は2003年4月から。サンプル価格は9000円。8月の量産を予定している。
三洋電機セミコンダクターカンパニーハイパーデバイス事業部CCD開発部の古沢俊洋部長は、「今年の後半はCIF(11万画素)とVGA(31万画素)が逆転し、VGAのほうが出荷量が多くなるだろう」と話している。
高画素化の流れの中でDSP部を分離
三洋の携帯向けCCDモジュールは周辺回路を1チップ化することで小型・低消費電力化を果たしてきた。今回は周辺回路を、電源周りとデジタル信号処理部(DSP)の2チップ構成としている。
これは「画素数が増えていくと、デジタル処理の負担が増えるだろう」(古沢氏)という想定からだ。JPEG処理やMPEG処理機能を将来的に入れ込めるようにチップを分けた。また1チップ化により消費電力を抑える方向も想定している。
周辺回路構成の変化。機能増大に柔軟に対応できるよう、デジタル信号処理部を切り離した
「高画素化にはCCDでなくてはならない」
三洋電機の携帯向けCCDモジュールは、携帯向けカメラで大きなシェアを持つ。評価された理由はどこにあるのだろうか?
「とにかく小さくて低消費電力でなくてはいけない」と、古沢氏は話す。一般に携帯電話向けカメラモジュールは厚さ7ミリを切ることを求められる。また消費電力に対する要求も厳しい。
「画素数が増えていく中で、CMOSはあまりに感度が悪いのでシュリンクできない。レンズ系まで含んだ大きさを考えると、CMOSでは限界がある。高画素化にはCCDでなくてはならない」(古沢氏)。
CCDサイズの拡大は光学系の拡大を招く。今回のHyperEyeでは、CCDのセルサイズは3.3μメートル。1/7型に31万画素を載せた。古沢氏はCMOSは4μメートル程度で足踏みしており、これ以上の微細化は難しいのではないかと想定する。
100万画素以上のメガピクセルCCDについては、「今のセルサイズで作ると、1/3型-1/2.7型と大きなものになってしまう。本当の勝負はセルサイズが2μメートル以下のところでやりたい」(古沢氏)。現状でメガピクセルカメラモジュールを作ると、「厚さは10ミリを切るのがやっとではないか」というのが古沢氏の予想だ。
古沢氏は「メガピクセルが携帯に載ることに本当に意味があるのか」としながらも、高画素化はやらざるを得ないとしている。
| モジュール | IGT99263-ST | IGT99267-ST | IGT99267-ST3 | IGT99268M-ST |
| 搭載CCD | 1/7型 | 1/9型 | 1/9型 | 1/7型 |
| CCDサイズ(ミリ) | 3.02×4.03 | 2.5×3.57 | 2.5×3.57 | 3.24×4.02 |
| 画素数 | 393×306 | 393×306 | 393×306 | 693×498 |
| セルサイズ | 5.55μ×5.55μ | 4.5μ×4.5μ | 4.5μ×4.5μ | 3.3μ×3.3μ |
| 周辺LSI | 2チップ/1パッケージ | 2チップ/1パッケージ | 1チップ/1パッケージ | 2チップ/1パッケージ |
| モジュールサイズ(ミリ) | 14×10×6.2 | 11.4×8.2×5.3 | 9.8×8.2×5.0 | 12.9×9.9×6.5 |
| 消費電力(15fps) | 90ミリワット | 45ミリワット | 35ミリワット | 130-150ミリワット |
一般的なCCDはインタライン方式(IT方式)を用いるが、三洋電機の携帯向けCCDはフレームトランスファー方式(FT方式)を採用している。
「IT方式は、1画素の中に光を受ける部分と転送部があり複雑な構造をしている。転送部に情報を送る際に高い電圧が必要になる」と古沢氏。IT方式が15V程度の電圧が必要だとすると、FT方式は7V程度。低電圧化によって消費電力を抑えると共に、電源部を内蔵し1チップ化も可能となった。
参入が相次ぐ携帯向けカメラデバイスだが、未だに供給は足りていないようだ。古沢氏によると、「充足率は60-70%程度。この状態は今年いっぱい続くだろう」。
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三洋電機
[斎藤健二, ITmedia]
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