Intel初のUMTS/W-CDMAチップセット「Hermon」
今後普及が見込まれる3G携帯市場に向け、低価格な3G端末向けの統合型チップをIntelが開発した。2CPU構成のチップセットに比べ20%部材コストを削減可能。2005年以降の提供を目指す。
IntelがUMTS/W-CDMAといった3Gにも対応した通信チップ「Hermon」の開発を発表した(2月26日の記事参照)。アプリケーションプロセッサ「XScale」のコアを含み、低価格な3G携帯電話の開発を可能にする。2005年以降に市場投入される予定で、既に端末メーカーとの交渉に入っている。
現在、3G携帯電話は立ち上がっている最中だが、早晩、ハイエンド端末だけでなく普及価格帯の端末が必要になってくる。その市場がHermonのターゲットだ。
3G向け統合チップで、部材コスト20%削減
これまで「PXA800F」(コードネーム、Manitoba)などGSMに対応した統合型通信チップを提供してきたIntelだが、Hermonで第3世代の通信方式、W-CDMAやUMTSへ対応していく。
Hermonの特徴は普及価格帯向け製品が容易に開発できることだ。第3世代携帯電話では開発コストの低減や性能向上のため、通信チップとは別にアプリケーションプロセッサを積む、2CPU構成が一般的だが(1月28日の記事参照)、Hermonでは両者を統合することで部品コストを削減できる。
「2CPU構成の場合、それぞれのチップにフラッシュメモリやSDRAMが必要だ。Hermonではそれらをまとめることで部材費を20%削減できる」と、インテルワイヤレスコンピテンシ・センターの遠藤千里部長は話す。着信メロディもXScaleのソフト処理で行うことで、音源ICも不要になるほか、MPEG-4チップを使わずともQCIF/15fps品質のテレビ電話が可能だという。
端末開発の大きなウエイトを占めるソフト開発については、XScaleのソフト資産やGSM向けチップの資産をそのまま生かせることがメリットとなる。
1チップ~GSM/GPRS/EGPRS(EDGE)/UMTS/W-CDMA
Hermonは、XScaleコア、マイクロ・シグナル・アーキテクチャDSP、フラッシュメモリ、SRAMからなっており、製造プロセスは0.13マイクロメートル。さらにメモリをスタック(積み重ね)することができる。
XScaleコアは「PXA800F」と同等、XScale向けに32Mビットのフラッシュメモリと2MビットのSRAmを内蔵している。RF回路や電源は外付けだが、IntelのCMOSプロセスに適合するCMOS RF回路の研究も進めており(2002年9月の記事参照)、2010年あたりを目処に統合を目指す方針だ。
通信方式は、下記に対応。
- GSM/GPRS Class12
- Class12 EGPRS(EDGE)
- Rel 99/Rel 4 UMTS(W-CDMA)
W-CDMAの通信では、上り下り対称の384Kbps通信が可能。試算では待ち受け400時間以上、130分以上の通話時間を見込んでいる(800mAhバッテリー使用時)。
最大2MピクセルのCCD/CMOSカメラと直接接続することが可能な「クイック・キャプチャ・テクノロジSL」に対応し、USB OTG(On The Go)も利用できる。今年後半からは無線LANやBluetoothチップも接続できるようインタフェースを整備していく。
パイロット・キャンセレーションでS/N比向上
W-CDMAに関するIntel独自の工夫も施される。「ネットワーク・パイロット・キャンセレーション」という技術により、S/N比(ノイズに対する信号の比率)を向上。結果、ネットワークの収容能力を10~20%増大させられるほか、基地局1つあたりのセルサイズの大幅拡大も可能になるという。
この技術は、複数の基地局から入ってくる余分なパイロット信号をキャンセルして、必要な信号をうまく取り出すものだ。通常携帯電話は複数の基地局からのパイロット信号を受け取っているが、「ほかから入ってくるパイロット信号は余計な信号」(遠藤氏)にすぎない。周辺の基地局からの電波状態を常にモニターすることで、不必要な信号を逆相の信号でうち消し、メインの基地局からの信号を得やすくする。
Intelはこの技術をIP(Intellectual Property)としてHermonに盛り込んでおり、3GPPにもTR 25.991として提案している。
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