KDDIと放送6社、「デジタル・1セグラジオ」を披露
1セグ放送といえば、テレビだけではない。KDDIと音声放送事業者6社は、地上デジタル音声放送の1セグメントサービスのインタフェースを公開した。
KDDIと音声放送事業者6社は、地上デジタル音声放送の1セグメント放送サービスのデモを行った。今後、QRコードや音声ファイルダウンロードといったサービスの実験も行っていくことを発表した。
発表したのは、横浜エフエム放送、TBSラジオ&コミュニケーションズ、エフエムナックファイブ、文化放送、ベイエフエム、日経ラジオ、それにKDDIの7社。地上デジタルラジオはラジオ局や通信事業者などが社団法人デジタルラジオ推進協会を設立、東京と大阪で試験放送を行っている段階だ。
現状ではテレビ第7チャンネルの4MHz幅(188~192MHz)を8セグメントに分割し、3セグメント×1チャンネル(3月3日の記事参照)と1セグメント×5チャンネルの放送を行っている。今回の発表を行ったのは、このうち1セグメント放送を手がける6局。
チャンネル | 事業者 |
---|---|
91ch | NHK |
92ch | TBSラジオ、FM横浜、BAYFM、ラジオNIKKEI |
93ch | 文化放送、NACK5 |
94ch | J-WAVE、メガポート放送、RFラジオ日本 |
95ch | ソニー、伊藤忠商事 |
98ch(3セグ放送) | FM東京、ニッポン放送 |
1セグラジオのインタフェースが公開
KDDIと放送局は、これまでもオペレーションや危機障害情報の共有化、導入機器やサーバの共同購入などを行ってきた。しかし、実際には放送と通信それぞれの役割があいまいな状況だったという。
このため、合同コンテンツ作業班を設け、各社の役割を整理。「放送がゲートウェイで、詳細は通信」と定めるとともに、リアルタイムな双方向機能などを搭載することで話を進めた。
発表会では、KDDIのPDA型試作機を利用し、実際に東京タワーからの1セグメントラジオ放送を受信。そのユーザーインタフェースを、報道陣向けに公開した。
会場では、通信と放送を連携させるべく2つの技術を検証することが明かされた。1つは、サーバに音声ファイルを置いてユーザーにダウンロードさせる仕組み。実験では15秒から30秒程度のデータを「音の壁紙」として用意していた。
「楽曲のダウンロードのほかに、ニュース・天気などをリピートするコンテンツも考えられる」(KDDI)
もう1つは、QRコードを活用したサービス。デモでは、クイズの答えとしてQRコードを表示させる様子が示された。「PDA端末に表示させて、携帯で読み取ってもいいし、携帯画面に表示させてそのままデコードしてもいい。画面に映ったものを、周りのユーザーが読み取る形も考えられる」(KDDI)。
QRコードは、公開録音イベントの“入館証”代わりにも使えるほか、番組で紹介した店舗の位置情報をURL化し、EZナビウォークと連携させることも考えられる。ほかにも電子クーポンサービスや、QRコードのデータを蓄積することで「ラジオ文庫本」のようなサービスも考えられるとした。
デジタルラジオ端末は、いつ登場する?
サービスのインタフェースが公開された1セグメントラジオ放送だが、対応端末は開発時期が未定。本サービスの開始時期も、2011年とされているが正確には決まっていない。
「こうしたサービスができるということで、端末メーカーに『面白そうだ』と言ってもらえれば」(KDDIの村上仁己執行役員)。PDA型のものが出るのか、携帯電話型のものが出るかも現状では不明だ。
地上デジタルテレビは、各メーカーが1セグ放送対応の携帯端末を開発しているが(特集:1セグ放送&モバイル放送・徹底比較参照)、この端末でデジタルラジオを視聴することは可能なのだろうか。
「(テレビとラジオが)イコールなアルゴリズムで動くと思うので、うまくやれば効率的な準備ができると思う」(村上氏)。会場で聞く限りは、アンテナ・デコーダ部などで共用化できる部分と、そうはいってもできない部分がある……というのが実情のようだ。
デジタルラジオ放送が開始されるのは、2011年と言われている。もっとも、KDDIの村上氏は「キャリアとしてはもっと早まってほしい」と、前倒しを期待するコメントを残した。
関連記事
- 通信と放送は融合しない――KDDIの出した答えは?
1セグ放送受信の試作機開発など「通信・放送連携」を着実に具現化していくKDDI。その先には、ITSとの連携も視野に入っている。同社の考えを聞いた。 - 地上デジタルラジオと電話が連携すると?
KDDI、エフエム東京、バイテックの3社は、地上デジタルラジオ受信機の新しいプロトタイプを公開した。PDA一体型でCFスロットにはAir H"カード。これを使い、3社は放送と通信の連携による新しいアプリケーションの実証実験を行う。 - KDDIの地デジ端末で見えた「通信と放送の融合」
KDDIが、携帯電話サイズの地上デジタル放送用端末を開発した。OFDM放送を受信できるほか、BMLにも対応した本格的なもの。ただし、映像圧縮方式はH.264ではなくMPEG-4に対応した。 - もう1つのデジタル、「地上波デジタルラジオ」が実は面白い
デジタルというと放送ばかりが注目されるが、より現実的で、可能性に満ちているのが「ラジオ」だ。高音質放送から簡易動画放送、なかにはお気に入りのアナの声で一日中しゃべってもらえるようにするといった研究も行われている
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.