韓国標準アプリプラットフォーム「WIPI」を紐解く──技術編:韓国携帯事情(2/2 ページ)
韓国の携帯向け統一アプリプラットフォーム「WIPI」。その技術的特徴、そしてコンテンツプロバイダはWIPIをどう見ているのか。WIPI利用の現場に迫った。
サンプルとして同社の代表的ゲーム「水切りゲーム」を見せて頂いた。これはもともとJavaで作られていたのをWIPIに移植したものだ。
同社の代表作。タイミングよくボタンを押して石を跳ね続ける「水辺の水切り」(左)は、約4万回という連続記録を樹立した人もいるとか。携帯電話を縦横に回しながら遊ぶ、ユニークなヒット作「ノム」(中央)。同社によると、これらのような簡単に楽しめるアクションゲームや、RPG(右)の人気が高いそうだ
既存のプラットフォームからWIPIへの移行は、Javaに関しては、WIPIがMIDPを包括しているので容易だという。同社ではプラットフォーム移植に関するマニュアルなどを用意しており、WIPIへの移植も一般的なプログラマーで約2日と短期間で済むようだ。ちなみにCで作られたアプリの移植についても「実績はまだないが、それほど大変ではない」(ジョン・ヨンヒ氏)と言う。
ゲームを快適に動かすためには動作速度も気になるところだが、WIPIに対応した端末自体が最新のものであることもあり、動作は比較的高速。加えて「JavaとCの速度を比べると、約1.5倍ほど後者が速いので、3Dを使ったゲームはCで作成し、それ以外はJavaということになるでしょう」と、ジョン・ヨンヒ氏が話すように、用途に応じて言語の使い分けも行っている。
日本では多くのアプリ開発者が「機種ごとに動きが違ったり、動かなかったりする」という機種依存の問題に苦しんでいるが、WIPI対応端末ではそのような問題は少ないという。ただしWIPI自体いくつかのバージョンが存在し、KTFの一部端末で上位機種と互換性のないバージョンが採用されているものがある。それゆえ、複数のバージョン向けアプリを別々に生成しなければならないなどの手間はあるようだ。
今後も進化が予想されるWIPI。昨年だけでも2度のバージョンアップを経験し、状況が変わりやすい過渡期にあるため、今がCPにとっても一番大変な時期だという。
「しかしいずれ状況は落ち着くでしょう。その頃には、画像の特殊効果などゲーム制作者向けのAPIも組み込まれていたらなおいいですね」とジョン・ヨンヒ氏。現在の韓国市場において、WIPIは「数多く存在するプラットフォームの1つ」でしかない。整備が落ち着く頃には、CPが望む一大アプリプラットフォームとして成長していることだろう。
WIPIはロイヤリティーフリーでオープンな環境であるが、文中にある通りアプリはキャリア経由で配信されるため、いわゆる「勝手アプリ」の配信は認められていない。
これはセキュリティ保護のためという利用もあるが、そもそも韓国には日本のように「個人でアプリを作って配信する」という仕組みが存在しなかったということも影響しているようだ。
勝手アプリが存在しないとなると、WIPIを下支えする技術者の盛り上がりが期待できないという心配がある。そこで韓国では、年に数回WIPIソフトウェアの公募展などを行うことで、WIPI開発の発展に努めているという。
佐々木朋美
プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。
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