パナソニック モバイルが「3キャリア供給体制」を整えた理由
パナソニック モバイルが、auやボーダフォンへも端末供給することが明らかになった。背景にはキャリア側の思惑以外に、パナソニック モバイル固有の事情もあるようだ。
パナソニック モバイルコミュニケーションズが、積極的に国内キャリアへの端末供給体制を構築している。背景には、「番号ポータビリティを控えて端末ラインアップを増やしたい」というキャリア側の思惑以外に、パナソニック モバイル固有の事情もあるようだ。
5月25日、KDDIはパナソニック製のau携帯を2007年春にもリリースする考えを明かした(5月25日の記事参照)。これはボーダフォンがパナソニック端末のリリースを発表してから(5月10日の記事参照)、わずか15日後のことだ。それまで携帯分野では“ドコモ専属メーカー”の感もあったパナソニック モバイルだが、ここにきて一気に3キャリアへ端末供給するメーカーとなった。
なぜ、このような動きをとったのか。パナソニック モバイルの関係者は逆に、「3キャリア向けに供給できなかった理由」をこう説明する。「複数のキャリア向けに製品ラインを管理するというのは、非常に難しいこと。シャープなども3キャリア向けに端末供給する体制をとるというが、製品ラインの管理手法が上手くなくてはこのようなことはできない」
パナソニック モバイルはもともと、au向けの携帯電話を手がけていた。最後にau向けに供給したのは「C3003P」で、この発売時期は2002年3月にまでさかのぼる。だがその後、同社は海外市場での製品展開を強化すべく、社内のリソースをそちらに振り分けた(関連記事その1、その2)。こうした流れの中で、au向けの製品供給が途絶えがちになった……という事情があるようだ。
海外事業の撤退から、国内重視へとシフト
しかし、状況は2005年の12月に変わる。パナソニック モバイルコミュニケーションズとして、海外2.5GのGSM端末事業は順次撤退することを発表したのだ(2005年12月9日の記事参照)。これによりフィリピンのGSM端末生産拠点を閉鎖し、チェコ拠点のGSM端末生産部門も閉鎖する。中国拠点のGSM端末生産は3Gに順次シフトさせるほか、米国開発拠点も閉鎖し、英国開発拠点は3G以降の伝送系技術とプラットフォーム開発に特化する。
飽和しつつあるといわれる国内の携帯市場と異なり、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)などの海外市場は携帯メーカーにとって魅力的だといわれる。一方で国内メーカーはこの分野での苦戦が続いており、NECは同時期に海外事業を縮小する計画を明かしているほか(2005年12月28日の記事参照)、三洋電機も2006年になって、フィンランドのNokiaと組んで海外市場での苦境を巻き返す構想を発表している(2月14日の記事参照)。こうした中で、松下電器がとった選択肢は「海外ではなく国内に再集中する」という戦略だったわけだ。
パナソニック モバイルの広報は、例えばボーダフォンは海外ともつながりのあるキャリアだとして、海外事業を視野に入れたノウハウも積んでいけると話す。「(携帯事業の)リソースをきちっと使いながら、国内プラットフォームを固める。ここで経験を重ねて、数年後には海外に“再参入”する展開になれば」
不振を乗り越えて、もう一度海外へ挑戦するために。パナソニック モバイルのマルチキャリア展開の裏には、そうした思惑が隠れているようだ。
関連記事
- パナソニック製au携帯が発売へ
パナソニック モバイルの製造するau携帯が登場することが明らかになった。2007年春頃にリリースする予定という。 - 松下、海外2.5G端末から撤退 3Gに集中、Linuxに統一
パナソニックモバイルコミュニケーションズは2.5GのGSM端末から順次撤退し、3G以降に集中する。FOMA「P」シリーズに搭載しているLinuxを海外端末でも採用し、開発効率を高める。 苦境脱出のために――三洋が見出したNokiaという「光明」
既報のとおり、三洋電機はNokiaとCDMA2000事業を扱う新会社を設立すると発表した。背景には、国内携帯メーカー共通の苦悩がありそうだ。- 「N」「P」携帯ブランドは提携後も統合せず──NEC社長
NECと松下が携帯電話端末事業で、開発や調達の共通化も視野に入れた提携について具体的な検討に入ることで合意。ただし「事業統合にはならないのでは」とNEC・矢野社長は話す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.