“音楽だけじゃない”それが進化の証――「ウォークマンケータイ W52S」:開発陣に聞く「W52S」(3/3 ページ)
初代ウォークマンケータイの「W42S」から音楽機能を強化した「W52S」。一方で、携帯電話として基本機能や使いやすさも改善された。ケータイとして進化したW52Sのポイントを、開発担当者に聞いた。
薄さと美しさにこだわったスライド機構
W52Sのボディは、W31Sからのスライド形状を継承している。W52Sでは2.7インチ液晶を採用しており、W42Sよりも幅や高さは増したものの、グッとスリムになった。
「スライド機構は過去にやっているので、それをもう一度使えば本当に楽なんですが、ウチはソニエリなので(笑)基本的に前と同じことはやらない。スライドの構造をまったく変えて、特に薄さを追求しました」(矢部氏)
スライド端末の使いやすさを決めるのは、上になるディスプレイ側ボディと下になるダイヤルキー側ボディの段差だと言われる。段差が大きいとキー操作時の指の移動がスムーズにできなくなるからだ。
そこで、W52Sでは今までの日本の携帯電話にはない段差の少なさを目指し、ディスプレイ側ボディを極限まで薄くしたという。確かにクリアキーが配置されている部分は非常に薄くおさえられ、段差を意識することなく操作できる。発話・終話キーがボディの両サイドにかかっていることも、ボディを極限までの薄型化に貢献している。
「段差の先端部分を薄くするためには、ボタンを移動する必要がありました。普通の配置でも試作したんですが、これほどの薄さを実現できないし、あまりにも他社のスライド端末と同じだったので“ちょっと嫌だね”、という話になりました」(矢部氏)
しかしこの位置だと、スライドオープンしたときに指から遠くなってしまう。そのためボタンをギリギリまで大きくして、押しづらさをカバーするようにした。
ダイヤルキーの配列は、中央の列だけが少し下がっている。上筐体のラインが丸いので、他のキーと同じ場所に置くと[2]のキーが近すぎて使いにくいという使い勝手を考慮した面もあるが、デザイン的な意図が大きいという
「あまりに下側に詰めて配置してもかえって誤操作を招くので、なるべく離しました。誤操作しにくい距離で、なおかつあまり遠くにいかないレベルという場所に決めています」(鈴木氏)
またスライド機構は大きく動き、力が強くかかる部分でもある。薄さを目指しながら、強度も重要となり、もちろんスムーズに動かなくてはならない。そしてさらにソニー・エリクソンの開発陣にはスライド端末に対する1つのこだわりがある。
「他社さんのスライドユニットを見ると、裏に大抵レールが見えると思うんです。うちは絶対にレールを見せていません。今回はW42Sのときより進化させて、ほとんど何もない形状にしています」(矢部氏)
スライド端末はレールが長ければ長いほど、強度的にも、調整面でもメリットが大きいという。
「でも、ウチの端末はスライドして見えるところをレールの場所として使っていない。使えるレールの長さはほかの端末の約半分です。構造的には難しいけれど、レールが見えたら格好悪いし、ここはエンジニアとしては譲れないところ。本当は売り場ではスライドを開いて、裏面を見せて置いてほしいくらいですね」(矢部)
カラーやダイヤルキーの配置など、ディテールにもこだわりを見せる。ボディは各所の色をきれいに出すために、必ずしも分けなくてもいい部品を分け、マスキング塗装ではなく個別に塗装し、その後超音波で部品を接着する方法がとられた。
「それが何のためかというと、色のためだけなんです。手間とコストがかかるし、パーツを分けるので強度を上げる必要もある。“色を変えるためだけに超音波で部品をつける”という方法をいろいろなところで使っています。製造する立場からするとほとんどいいことがないんですが、色をきれいに見せて、スライドを開けたときにびっくりさせるためには必要でした」(矢部氏)
W52Sは、音楽をより高音質で楽しむための「クリアオーディオテクノロジー」や、着うたとATRACに両対応する2Gバイトの内蔵メモリを搭載した。また、1人はもちろん仲間と一緒に音楽を楽しめるよう、大型のスピーカーやFMトランスミッターを用意している。“ウォークマン”ブランドを背負った携帯電話として、音楽機能をより強化した端末に仕上がった。
そしてスマートに音楽を楽しむためにスリムにデザインされたボディは、携帯電話としても快適に使うことができる。ソニー・エリクソン製のau端末として、今現在でベストな1台であることは間違いないだろう。
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