アッカの強みは、インフラの提供だけにとどまらないこと──アッカ・ワイヤレス 木村社長:石川温が聞く(2/2 ページ)
総務省が用意した2枠の割り当てを巡って、4社が名乗りを上げた2.5GHz帯周波数。オープンワイヤレスネットワークとウィルコムが“場外乱闘”を繰り広げる中、アッカ・ワイヤレスも周波数獲得に自信を見せる。
MVNOには、企業や業種に応じてインタフェースをオープンにする
石川 他の陣営は、MVNOに積極的である点をウリにしています。御社は他社と比べると、MVNOでは、どのあたりが差別化になるのでしょうか。
木村氏 MVNOのビジネスモデルについては、各陣営がすべての情報を公開しているわけではないので、相手のことを評価するのは難しいです。
我々は、ネットワークのレベルで言うと、アクセスサービス、コネクションサービスなどのレイヤーを、MVNOの対象となる企業、業種に応じて、できるだけオープンにしていこうとしています。仕組みを全部うちで準備して、それを使える人はどうぞ、というMVNOだけなく、認証などのインタフェースもオープンにして、独自の課金・認証システムが用意できるところには独自のものを使っていただけるようにしたいと考えています。
MVNOのビジネスモデルもさまざまなものが出てくると思うので、それぞれに応じたインタフェースを用意します。ベースとなる料金なども透明度の高い者にしたいと考えています。
事業展開は都市部から──速度よりもエリアカバーを優先
石川 仮に、免許の割り当てが、同じ技術であるモバイルWiMAXの2社になった場合、どこを競争軸として戦っていくのでしょうか。
木村氏 モバイルWiMAXは新しい技術です。グローバルスタンダードなので、プレイヤーが複数いるのは悪いことではないでしょう。
では、何を競争軸にしてくのかといえば、我々はいかに効率よくユーザーをカバーしていくかという点と、マーケットをいかに広げていくかという2つになると考えます。
まず、最高速のサービスを提供するよりも、なんとか実効カバー率をあげて、たくさんのユーザーに使ってもらえるような方向性を狙います。最高速度は40Mbpsもあれば十分だと思いますので、まずは最高速のサービスよりも、エリアの拡大を重視していきます。
市場を広げるという面では、他の業界を含め、コンテンツ、国際協調など、パートナー企業の広がりを考えていきます。現在、アッカ・ワイヤレスに資本参加している企業は16社ありますが、それ以外にも協業したいという会社が何社か出てきています。資本参加を含めれば、20社以上がうちと一緒にやろうと言ってくれています。業務としてどれだけ拡がっていくかが市場競争のファクターとしてあるでしょう。
石川 以前アッカ・ネットワークスでは、「WiMAXは地方からと支部へと展開する」といった話をされていたこともありましたし、新潟県魚沼市などのルーラル地域で実証実験を行っていたりしますが、2.5GHz帯の免許を取得した場合は、都市部からエリアを拡大していくことになるのでしょうか。
木村氏 やはり都市部から始めていくことになると思います。割り当ての条件に、エリアカバー率というのもありますし、また、地方でやっていた頃と比べて、与えられた帯域が広いので、スピードが出せるという背景もあります。都市を抜いてのサービス開始は考えられません。
今、横浜で実証実験を手がけています。日本大通りでは、モバイルWiMAXの基地局に無線LANのアクセスポイントを接続して、ゲーム機からアクセスできるような場所を作っています。これには、2つの目的があります。
まず、モバイルWiMAXが公衆無線LANサービスのバックホールとして動くことの実証と、無線LANのチップさえあれば、どんな機器もモバイルWiMAXの端末になるということの証明です。無線LAN対応のゲーム機やオーディオプレイヤーが容易に、無線LANを経由して、モバイルWiMAXにつながり、ネットにアクセスできるという環境は、都市部にこそ求められているような気がします。
そういう意味では、無線LANとモバイルWiMAXは競合ではなく協業していくようになると思います。公衆無線LANサービスの多くは、ドコモや、アッカ・ネットワークスに出資しているNTTコミュニケーションズなどでも手がけています。我々の定額制のモバイルWiMAXを契約すれば、どの端末を使っても、モバイルWiMAXだけでなく、無線LANスポットも使えるようになるかも知れません。
石川 ドコモ以外のNTTグループとも関係は深いのでしょうか。
木村氏 ご存じのように、アッカ・ネットワークスの大株主の1社はNTTコミュニケーションズです。前述のようにNTTコミュニケーションズは公衆無線LANサービスなども提供しているので、さまざまなことができると思います。新しい技術だけでサービスを広げていくのには時間がかかります。ですから、すでに何千カ所と広まっている公衆無線LANサービスと組んでいくのも大切だと思っています。
ソフトバンクとの資本提携はない
石川 ソフトバンクの孫(正義)社長は、アッカ・ワイヤレスと手を組んでもいいと発言しています。そのあたりは受け入れられる体制にあるのでしょうか。
木村氏 すでに討論会の席上でもお話ししましたが、我々はMVNOをオープンに提供するので、ソフトバンクも含めてMVNOへの対応はできると思います。しかし、エコシステムや資金調達に関しては、すでに動き出しているので、われわれで粛々とやっていきたいと思います。資本提携などについては考えていません。
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