Snapdragon搭載デバイス、早ければ年末に登場──米QUALCOMM COO ジャ博士
クアルコム ジャパンが5月15日、半導体事業戦略説明会を開催し、同社のチップセット戦略を説明した。通信機能を備えた小型のデバイス分野では、Snapdragonを搭載した製品が速ければ年内に市場に出てくる可能性があるという。
クアルコム ジャパンは5月15日、米QUALCOMMのCOO兼Qualcomm CDMA Technologies Group(半導体部門)プレジデント、サンジェイ・K・ジャ博士の来日に合わせ、同社の半導体事業戦略説明会を開催した。
そこではCDMA2000 1Xがこれからも進化し続けること、「Snapdragon」を搭載した、通信機能を備える小型デバイス(Pocketable Computing Device/Mobile Computing Device)が間もなく登場すること、CDMA2000とW-CDMA(UMTS)の両方に対応した通信モジュール「Gobi」を提供する計画があることなどが明らかにされた。
Snapdragon搭載デバイスは早ければ年内に登場
インテルが、MID(モバイルインターネットデバイス)やUMPC(ウルトラモバイルPC)といったプラットフォームをターゲットにAtomプロセッサとCentrino Atomプラットフォームを発表したように、クアルコムもこの分野は今後成長するポテンシャルがあると考えており、小型で、かつ無線通信によってインターネット接続が可能なデバイスを開発できるプロセッサ、Snapdragonを開発している。
ジャ博士は「我々はインテルの戦略とは必ずしも合意しないことが多いが、このような機器の市場の潜在性が高いという点については、共通の認識を持っているようだ」と笑いながら話す。
Snapdragonは、プロセッサコアに1GHzオーバーで動作するScorpionを採用した統合チップセットだ。600MHz動作のDSPやGPS、AMD製のグラフィックスコア、通信機能、HDビデオのデコーダー、ディスプレイコントローラーなどを備え、容易に小型のポケッタブルデバイスが実現できる。
Snapdragonが想定している“ポケットに入るサイズ”のデバイスとは、3.7~4.5インチのワイドVGAクラスのディスプレイを搭載し、ストレスなくWebブラウズが可能な機器。HD解像度の動画鑑賞や音楽鑑賞、GPSを利用したナビゲーション、ゲームなどもできるうえ、長時間のバッテリー駆動に対応する。
この長時間のバッテリー駆動が可能な点は、Snapdragonの最大の特徴だ。消費電力は2400D-MIPS(Dhrystone MIPS)で550ミリワット。プロセッサーは、高速に駆動するとリーク電流が問題になってくるが、Snapdragonではリーク電流を抑えつつ高性能化に成功しているため、処理能力は高いが消費電力は低い。
OSはBREWだけでなく、Windows MobileやLinuxなど、さまざまなオープンOSに対応。すでに日本、台湾、韓国および米国で、複数のメーカーが15機種ほどのSnapdragon搭載端末の開発を進めており、「2008年第4四半期から2009年第1四半期にはSnapdragon搭載製品の最初の製品が出てくる」(ジャ博士)という。
インテルのAtomに対するSnapdragonの優位性を問われたジャ氏は、「Snapdragonの特徴は、高度なインテグレーション(統合)をしていること。特にマルチモードの3G通信機能を持っていることが大きな違いといえる。また消費電力の少なさも非常に競争力が高い」と話した。
「インテルは半導体業界で大きな力を持ったプレーヤーだが、インテルのアプローチはデスクトップPCをコンパクトにする方向。最近でこそ、モバイル向けのプロセッサーも積極的に開発しているが、プライオリティーはプロセッサーの処理能力の高さに置かれてきた。一方クアルコムはモバイルコンピューティングからのアプローチとなる。携帯電話は低消費電力という観点が非常に重要だったため、そういうノウハウもすべて盛り込んでいる」(ジャ氏)
HSPA/EV-DO Rev.A/EDGEに対応した通信モジュール「Gobi」
ポケッタブルなコミュニケーションデバイスが拡大すると見る一方で、クアルコムではPCへの3G通信機能の統合も進むと考えている。ただ、すでにPCメーカー各社から、3G通信モジュールを組み込んだノートPCがリリースされているものの、その利用率はいまひとつ高くないとの調査結果もある。その理由は、「特定のキャリアと契約することが前提になっているため」だとジャ氏は指摘する。
そこでクアルコムが提唱するのが、HSDPA/HSUPAとCDMA2000 1X EV-DO/EV-DO Rev.A、GSM/GPRS/EDGEのすべての通信方式をサポートしたマルチモードの通信モジュール「Gobi」だ。1つのモジュールで、世界で利用されている大多数のネットワークに対応できることから、出荷前に特定の地域向けにカスタマイズする手間が少なく、認証取得なども容易に取得できる。
ジャ氏は「日本のようにW-CDMAとCDMA2000のネットワークが併存しているような地域では特に大きな関心を持っていただいている。PCメーカーにとっては、KDDI向け、ドコモ向けといったことを気にせず通信モジュールを組み込めるというメリットがある」と、PCメーカーからの引き合いが多きこともアピールした。
Gobiモジュールは、クアルコムがリファレンスデザインを提供し、機器メーカーが製造してPCメーカーに納品する形になる。核となるチップはMDM1000といい、そのほか通信やPCとの接続に必要な機器一式を含めてGobiと呼ぶ。HPやASUSTek、ソニー、デル、富士通、Samsung電子、東芝、ダイアローグ、レノボ、パナソニック、OQOなど、幅広いPCメーカーと協議を進めているという。
オープンプラットフォームにも積極的に対応
クアルコムは自社開発のBREWプラットフォームを積極推進しており、このプラットフォームは現在OSとほぼ同等の機能を備えるまでに成長しているが、OSはさまざまなオープンOSをサポートしていくことを明言した。Windows MobileやLinuxはもちろん、Open Handset AllianceのAndroidなども、MSMチップセットを含むすべてのラインアップで積極的に対応していく。
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