5分で分かる、先週のモバイル事情:7月19日~7月25日
7月22日、モバイル関連の技術・サービスを一堂に集めたイベント「ワイヤレスジャパン2008」が開幕。通信キャリアやメーカーらが激変するモバイル業界を乗り切るためのビジョンを示した。KDDIは第一四半期の決算を発表。営業利益11.7%減の増収減益となった。
ワイヤレスジャパン2008開催
携帯業界が激変期をむかえる中で開催された「ワイヤレスジャパン2008」は、ジャーナリストの神尾氏が指摘するように、ボーダレス時代の幕開けを感じさせるものとなった。
WiMAXや3.9G、WILLCOM COREといった次世代高速通信のロードマップが明らかになる中、キャリアやメーカーがこぞって基地局やコンセプトモデルを展示。ドコモは屋外実験で利用した車両を会場に持ち込み、スーパー3Gの通信デモを実施した。2009年2月にモバイルWiMAXの試験サービスを開始するUQコミュニケーションズも、具体的なサービスの方向性やビジョンを明らかにしている。
基調講演には各キャリアのキーパーソンが登場し、それぞれの立場から今後の取り組みを説明。ドコモとKDDIはエージェント機能を強化するとし、ソフトバンクモバイルは、ジョイント・イノベーション・ラボの第1弾プロジェクトとしてWidget Engineを開発する計画であると発表。ウィルコムはマイクロセルの強みをアピールし、WILLCOM COREの基地局を生かした新たなビジネスモデルの構築を目指して「BWAユビキタスネットワーク研究会」を立ち上げたことを明らかにした。
端末開発を手がけるシャープとNECは、国内市場が厳しさを増す中、どのような取り組みで現状を打開するかに言及。シャープは2台目需要の掘り起こしと社内外との積極的なコンバージェンス、海外進出を打開策として挙げ、NECはiPhoneと同様のサーバ/クライアントモデルをベースとした“総合力”で勝負するとした。NECはまた、基調講演の中で、同社の持つ無線通信技術、インフラ、サーバ、サービスプラットフォームを生かした次世代端末のコンセプトモデルを披露。iPhoneと同じサーバ/クライアントモデルでも、多彩な端末を提供できる点がAppleとは異なるとアピールした。なお同社は、2台目需要も積極的に狙っていく考え。ただし海外進出については「市場を注意深く見て判断する」と慎重な姿勢を見せた。
関連キーワード
NEC(日本電気) | ウィルコム | 基地局 | 海外進出 | iPhone | NTTドコモ | 2台目 | シャープ | WiMAX | エージェント機能 | Apple | ビジネスモデル | インフラストラクチャ | ジョイント・イノベーション・ラボ | マイクロセル | ソフトバンクモバイル | スーパー3G | UQコミュニケーションズ | ワイヤレスジャパン
KDDIの2009年3月期第1四半期決算、増収減益に
KDDIが7月22日、2009年3月期第1四半期決算を発表。連結決算は売上高が8705億円で、前年同月比で3.1%増を記録したものの、営業利益は1244億円にとどまり、前年同月比では11.7%減。経常利益は前年同月比12.5%減の1248億円を記録し、増収減益となった。
同社の業績を牽引するモバイル通信事業は、売上高が微増したものの、営業利益は減価償却費や固定資産除却費、販売手数料の増加などが影響し、前年同月比で8%減となった。
決算会見で小野寺正社長は買い方セレクトの状況や春商戦を終えた反省点、次世代高速通信の導入などに言及。買い方セレクトについては、シンプルコースを拡充した6月10日から6月30日までの動向を紹介し、シンプルコースの選択率が62%となり、高機能端末でシンプルコースの選択率がさらに高くなる傾向があると説明した。なお、シンプルコースを選択した人のうち、92%が分割払いを選んでいるという。
春商戦については、「一部はいい端末もあったが、出した端末が必ずしもお客様にとって魅力のある端末ではなかった」と振り返り、KCP+導入の遅れが全体的な端末出荷の遅れにつながったことが影響したという見方を示した。「秋冬でそこはリカバーできるだろうと思っている」(小野寺氏)
次世代高速通信ネットワークの導入計画については、「実態として、LTE以外の選択肢はないだろうということはすでに話している。その状況については変わっていない」と改めて話し、「どの時点でLTEの採用を正式に表明するかについては検討を進めているが、あわててやる必要性はないと思っている。今の時点では実質的にLTEだと思っていただいて結構」(小野寺氏)と明言した。
au design projectの新コンセプトモデル登場、テーマは“層”と“楽器”
7月25日、KDDIがau design projectの最新コンセプトモデルをKDDIデザイニングスタジオで披露した。
新たなコンセプトモデルは、カドケシで知られるデザイナーの神原秀夫氏とコラボレートした「PLY」と、ヤマハデザイン研究所とのコラボ端末「ガッキ ト ケータイ」。展示初日には、楽器ケータイを手がけたヤマハデザイン研究所の田中聡一郎氏が実際に楽器ケータイを演奏して見せた。
同氏は、ケータイの中に楽器のエッセンスを封じ込めるという取り組みを通じて、“楽器をもっと身近な存在にできるのではないか”と思ったと話す。開発時には「“ケータイに愛着を持ちたい”とか“使って気持ちいい”ということを実現するには、ひょっとしたらタッチスクリーンを使わない別のソリューションのほうがいいんじゃないか」と考えたとし、楽器の持つアナログなインタラクションを通じて、それを表現したという。
ケータイ向けRIAプラットフォーム「Colors」登場
7月23日、ネイキッドテクノロジーが、ケータイに特化したRIAプラットフォーム「Colors」のドコモ向けクライアントアプリのα版を公開した。
RIAとはHTML表記のWebサイトに比べて、リッチな表現や柔軟な操作が可能なWebアプリケーションの総称で、PC向けにはAdobeが「AIR」を、Microsoftが「Silverlight」を開発している。ネイキッドテクノロジーは、モバイルに特化することで競合との差別化を図る考えだ。公開されたα版ではTwitterクライアントの「twittie」と、Flickr閲覧用クライアント「flickkie」を利用でき、それぞれのサービスに最適化した見せ方やUIを試すことができる。
サイトごとに最適な見せ方やUIを適用できるのが特徴で、広告についてもこれまでのテキストやバナーとは異なる、行動履歴やソーシャルグラフを生かした仕組みのモデルを自社で開発しているという。
関連キーワード
RIA | ユーザーインタフェース | 広告 | Flickr | Silverlight | ソーシャルグラフ | Twitter | Webアプリケーション
関連記事
- 特集:ワイヤレスジャパン2008
激変するモバイル市場、ケータイキャリアが進む方向は
ワイヤレスジャパン2008の2日目、「モバイル通信サービス事業の将来ビジョン」と題した基調講演にケータイキャリアのキーパーソンが勢揃いし、それぞれの立場から今後の取り組みについて説明した。ドコモとKDDIは“エージェント機能”に注目。ウィルコムは次世代PHSへの取り組み、ソフトバンクモバイルはiPhone 3Gの分析が話題に上った。“ケータイでもPCでもない、その間の市場”を狙う――見えてきた、UQのWiMAX戦略
広帯域・大容量、高速モビリティ、常時接続環境、世界標準仕様――。2009年夏、こんな特徴を備えたモバイルWiMAXの商用サービスがスタートする。ワイヤレスジャパン2008の基調講演に登壇したUQコミュニケーションズ代表取締役の田中孝司氏がサービスのビジョンと目指す方向性について説明した。移動局実車両でスーパー3G速度の体験、モバイル放送からバッテリーまで近未来の技術も──NTTドコモブース
ワイヤレスジャパン2008のNTTドコモブースは、真っ赤な装いと新ロゴとともにスーパー3G、モバイル放送、夏モデル新機種、法人向けソリューションなど多岐に渡る展示を行う。「ボーダレス時代が幕を開ける」それを感じたワイヤレスジャパン
ワイヤレスジャパン2008が開幕した。会場を歩いていて感じるのは、ガラパゴスと呼ばれてきた日本のモバイル市場にも、グローバル化・ボーダレス化が確実に進んでいることだ。“シャープならでは”のコンバージェンスでケータイに新たな価値を――シャープ 松本副社長
市場を取り巻く環境の変化で、出荷台数が伸び悩んでいる日本の携帯端末市場。シャープの松本雅史副社長は、自社が持つ家電やオフィス機器に加え、他事業との“コンバージェンス”を強化することでケータイの新たな付加価値を創出し、国内外のシェア拡大につなげたいと話す。これが“N”の次世代ケータイ――NEC、基調講演でコンセプトモデルを披露
ワイヤレスジャパンの基調講演に登壇したNEC 執行役員の山崎耕司氏が、これから同社が目指す端末開発の方向性に言及。無線通信技術、インフラ、サーバ、サービスプラットフォームも含めた総合力で“N”らしさを打ち出すとし、4つのコンセプトモデルを披露した。最新らくらくホン、ドコモのスーパー3G試作基地局やWiMAXソリューションも──富士通ブース
ワイヤレスジャパン2008の富士通ブースは、人気機種「らくらくホン」シリーズやお風呂ワンセグをはじめとする携帯新機種のタッチ&トライコーナーとともに、スーパー3GやモバイルWiMAXの基幹システムやソリューションといった先進技術も展示する。携帯新機種とグループの強みを生かしたホームソリューションも視野に──パナソニックブース
ワイヤレスジャパン2008のパナソニックブースは、2008年夏モデルのタッチ&トライコーナーを中心に、1979年の国内納入第1号機やグループの強みを生かした携帯と連携するホームソリューション、HSDPA通信モジュール搭載Let'snoteなどを展示する。KYOCERA&SANYOブランドの夏モデルはもちろん、「iBurst」も人気――京セラブース
ワイヤレスジャパン2008の京セラブースでは、KYOCERAとSANYOの両ブランドの夏モデルや海外端末を多数紹介したほか、「WiMAX」「次世代PHS」「iBurst」と3つの無線通信技術を展示した。アナログのアプローチで感性に訴える――「ガッキ ト ケータイ」が目指す新たな世界
au design projectの最新コンセプトモデルは、ヤマハとのコラボレーションから生まれた「楽器ケータイ」。楽器とケータイのコラボはケータイのあり方をどう変えるのか。端末開発を担当したヤマハデザイン研究所の田中聡一郎氏に聞いた。写真で見るau design projectの新コンセプトモデル
KDDIが7月25日から、原宿のKDDIデザイニングスタジオで「ガッキ ト ケータイ」展と「PLY -ケータイの層-」展を開催している。ここで、au design projectの最新コンセプトモデルを披露した。動画で見るau design projectの「Band in my pocket」「Sticks in the air」「Strings for fingers」
KDDIとヤマハのコラボレーションで生まれたau design projectの最新コンセプトモデル「楽器ケータイ」。実際にどんな音が鳴るのか、動画で紹介する。au design projectの新コンセプトモデルは、「楽器」と「層」がテーマ
KDDIは、au design projectの新コンセプトモデルを展示する「ガッキ ト ケータイ」展と「PLY -ケータイの層-」展を、東京・名古屋・大阪・福岡の4会場で開催する。- KDDIの2009年3月期第1四半期決算、増収減益に
KDDIが7月22日、2009年3月期の第1四半期決算を発表。売上高は前年同期比3.1%増となったものの、営業利益が11.7%減と増収・減益になった。 ケータイWebをもっとリッチに使いやすく――RIAプラットフォーム「Colors」の挑戦(前編)
携帯電話の機能や通信速度が向上する中、ケータイ向けWebサービスに注目が集まっている。しかし、携帯向けWebサイトは現状、見た目もビジネスモデルも従来型のものが大半で、携帯自体の進化に比べて遅れている感は否めない。これを「変えたい」と話すのが、携帯向けRIAプラットフォーム「Colors」を手がけるネイキッドテクノロジー 代表取締役の菅野龍彦氏だ。ケータイWebのリッチ化で広告はこう変わる――RIAプラットフォーム「Colors」の挑戦(後編)
ケータイWebをもっとリッチに使いやすく――。こんな思いから開発されたのが、携帯向けRIAプラットフォーム「Colors」。ネイキッドテクノロジー 代表取締役の菅野龍彦氏は、ケータイWebのリッチ化で広告モデルも変わるとし、Colors上の独自広告を開発中だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.