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「iPhone 3Gを持っている人は別人種」──絶対の自信を見せた孫正義社長(2/2 ページ)

ソフトバンクは8月5日、2009年3月期第1四半期の決算を発表したが、その会見はさながら「iPhone 3G」の発表会だった。孫正義社長は自身が中国に出張した際に、iPhoneだけを使い、PCを一度も使わなかったエピソードを披露した。

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これから2~3年で大半の携帯はインターネットマシン化する

 孫氏はことあるごとに「2008年はインターネットマシン元年である」と発言してきたが、その根拠は通信速度、ディスプレイサイズ、そしてプロセッサーの処理能力の向上という3つの要素がすべて満たされ、ケータイが電話からインターネットマシンに進化するのに必要な条件がそろったのが2008年だからだという。


2008年、ケータイはインターネットマシンに進化するための条件がそろった

 通信速度は、2000年からの8年で約375倍に伸びた。ディスプレイの解像度は約24倍、プロセッサの処理能力も約24倍に達したという。孫氏は「この3つの要素がそろうのが2008年になるだろうと4年ほど前から想定して、ボーダフォンを2兆円近くかけて買収した」と、以前からインターネットマシン構想を持っていたことを披露。そして「同じように2008年がインターネットマシン元年になると読んだのがAppleのスティーブ・ジョブズであり、Googleであり、Microsoftである。インターネットの分野で先駆者として頑張っている各社のリーダーが、この3点セットがそろうのが2008年ということでおおむね照準を合わせてやってきた」(孫氏)と、その見通しがインターネット関連企業のほぼ共通の認識であったことも話した。

通信速度は8年間で375倍に、ディスプレイの解像度は24倍に、そしてプロセッサーの能力も24倍になったと指摘。こうした進化がインターネットマシンが生まれる土壌となった

 「テレビがモノクロからカラーになったように、携帯電話はボイスマシンからインターネットマシンへと進化していく。おおむね今から数年以内、10年はかからないが1年後ではないくらいの時期だろう。例えば携帯メールは従来の機能としてそのまま載っていくだろうが、複数のPCメールのアカウントと複数のデータフォルダも用途に応じて使いこなしていくようになると思う」(孫氏)

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 近い将来ボイスマシンとインターネットマシンの数が逆転し、3年くらいの間に、会社員の8割から9割くらいの人が当たり前に携帯電話で業務用のメールをチェックできるようになるような環境がやってくるとの考えを示した。

白黒テレビがカラーテレビになっていったように、ボイスマシンとしての携帯電話はいつかインターネットマシンとしての携帯電話と主流が入れ替わると予測

「iPhone 3Gがかわいくてしょうがない」


自分のiPhone 3Gを使った業務スタイルを披露する孫社長

 孫氏はiPhone 3Gのすばらしさを「iPhoneを持っている人と持っていない人では、人生の速度が変わるといっていい。別人種といってもいいくらいの違いがこれから出てくる。本当に(iPhoneを)持ってみてよかったと思う。これまで使った携帯電話の中で一番面白い。もうかわいくてしょうがない。つい楽しんでしまうので、時間が1日24時間では足りないくらいだ」と表現した。

 そして、iPhone 3Gが他の携帯電話ともっとも決定的に違うのが「Max OS X」ベースのOSを搭載しており、OSを更新できるため、陳腐化しない点だと力説した。「今後iPhoneに似たハードウェアやソフトウェアなどはいろいろな会社からたくさん出てくるが、iPhoneは買ったあとでも、どこかの時点でOSを進化させると言うときに、バージョンアップができる。同じハードでも別のiPhoneに進化するのだ。携帯電話は一回出荷すると、ソフトにバグが見つかっただけでもリコールしてソフトを書き換えないといけない時期もあったが、iPhoneにはそれがない。OSそのものが劇的な進化をしていく」(孫氏)

 また無線LANを標準装備する点も大きな魅力だと話した。3Gのいつでもどこでもつながるネットワークに加えて、より高速な無線LANへの接続が、1回設定するだけで可能になるため、非常に快適に使える。また、欧米のビジネスマンはみなBlackBerryを使っているが、これは会社の業務用Eメールサーバとセキュアにつながるからだと話し、「iPhoneもExchangeサーバなどとセキュアに自動連動する機能を備える。今までの日本のケータイでは、ほとんどそれ(Eメールサーバとのセキュアな接続)ができず、業務用のメールは読むことができなかったが、iPhoneなら可能だ」と、企業でiPhoneを導入するメリットにも言及。「出張に行くにもPCがいらなくなる」(孫氏)と、冒頭で話した自身の体験を交えながら、iPhoneだけでもかなりの仕事ができることを詳細に説明した。

 AppStoreという、「新しいアプリが毎日のように増えていく」(孫氏)世界共通のプラットフォームがある点も「強烈にすごい」と孫氏は言う。ニンテンドーDSやPSPなどのポータブルゲーム機を引き合いに出し、iPhone 3Gが3日間で100万台売れたときに、AppStoreでは1000万を超えるダウンロードがあったことに触れ「ゲーム専用機のソフト購入率は1台あたり1.x本から2本程度。しかしiPhone 3Gは1台あたり10本アプリをダウンロードしている。AppStoreには無料や100円や200円といった低価格なものも多く、ゲーム専用機のソフトにはなかった値付け。しかもお店に行かなくてもタッチ一発で購入できる。腹を抱えて笑うとか、楽しむとか、すごく便利なソフトとかが続々と出てくる」とiPhoneならではのアプリの魅力もアピールした。

 アクセサリーや周辺機器といった、携帯電話にはストラップや変換ケーブルくらいしかなかった商材が数千点も用意されているところもiPhoneの特徴だと話し、「私もiPhoneに大きなスピーカーをつないで部屋中に響き渡る音で楽しんでいる。何千曲もの音楽を常に持ち歩き、車の中でも家でも楽しめる。最近は何年も自分でCDを買っておらず、音楽も聴いていないという余裕のない日常だったが、iPhoneでは音楽を聴きながら車の中でメールを見たりできる。本当に人生観が変わった」と、とにかくとことん楽しんでいる様子だ。

 なお、このすばらしいiPhoneを、より多くのユーザーに手軽に入手してもらえるよう、予約の受け付けを始めること、メールの保存期間を無期限にすること、そして加入が必須のパケット定額フルの料金を、月額1695円~5985円の2段階定額制にすることも合わせて紹介した。

 予約受け付けは、単純に店頭で名前や連絡先を預かるだけでなく、それを管理するためのシステムをきっちりとソフトバンクモバイル側で用意したという。作業ミスをして迷惑をかけたりすることがないようなシステムを用意したそうで、品切れのショップでも、予約を受け付けて確実に販売できる制度を整えた。

 またパケット定額フルの改定は、熱心なヘビーユーザーだけでなく、お年寄りから子供まで、多くのエントリーユーザーにも購入してもらえるよう、ハードルを下げるための施策だという。「これまでは、データのトラフィックが10倍から20倍になると見ていたが、正直どれくらいのトラフィック増になるか分からない部分があり、いきなり多くのユーザーがどっとiPhoneを購入されるとユーザーにご迷惑をおかけする可能性があった。しかし、今のところトラフィックの増加は予想の範囲内で落ち着いている。そこで、より間口を広げて多くのユーザーに使っていただけるよう、料金を改定した」(孫氏)

 やはりエントリーユーザーにとって、いきなり月額最低料金が7280円というのはハードルが高かったようで、多くの反響があったものの、料金面がネックで買えないという人も多数いたという。そこで料金を改定し、入口を安くしてより幅広いユーザーにアピールしていくことに決めた。また2段階定額制にすることで、「ユーザー自身もパケット通信のコストをしっかり考え、無線LANなどを有効活用してくれるようになるので、トラフィックの効率は高くなる」(孫氏)と、その効果を説明した。

 「完全な横のフラットであれば、ユーザーにとっては3Gでダウンロードしようが無線LANでダウンロードしようが金銭的な違いはない。しかし、“斜めの階段”を用意すれば、ユーザーもコストを考えて無線LANを使うようになる。賢い使い方を、ユーザー自身がネットワークとコストをマネージしながら使うようになるというメリットがある」(孫氏)

 もともとiPodはiTunesを使って楽曲管理をする関係で、自宅のPCでダウンロードするという習慣があったことから、iPhone導入を機に家で無線LAN環境を整えようというニーズも出てきているとし、2段階定額制にすることで、無線LANの積極利用が促せると考えているわけだ。ゆくゆくは、ソフトバンクショップにも無線LANを導入していく考えがあることも明らかにした。

“アジアナンバー1”イコール“世界ナンバー1”のインターネットカンパニーへ

 「我々は、ソフトバンクが通信会社だとは思っていない。実はソフトバンクは、インターネット企業の中では世界で2番目に高いEBITDAを稼いでいる。これはGoogleに次ぐもので、EbayやYahoo!、Amazonよりも上だ。しかもソフトバンクは、Googleのようなプラットフォームと動画コンテンツだけでなく、幅広い分野をカバーする。中長期的には、『アジアにおけるインターネットのナンバー1カンパニー』イコール『世界のインターネットナンバー1カンパニー』をめざす」(孫氏)

携帯電話の世界は、電話会社中心の世界からネット企業中心の世界へうつっていくと孫氏は主張する。ソフトバンクは、2007年度のEBITDAではネット企業で世界2位の座にあるという
EBITDAの伸び率はGoogleに匹敵すると孫氏。そして、かつては米国でのナンバー1がインターネットのナンバー1だったが、2015年には世界のインターネット人口の半分がアジアになるとし、アジアのナンバー1こそがインターネットのナンバー1になると力説した

 最近は米国出張よりも中国出張が多いという孫氏。急成長するアジアのインターネット市場でナンバー1の座を獲得することが、世界のインターネット市場でのナンバー1につながるという持論を、これからの10年で継続的に主張していくと話した。

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